デンマーク・Copenhagen Center for Arthritis ResearchのMikkel Østergaard氏らは、欧州6カ国で行われた非盲検ランダム化比較試験(RTC)Nordic Rheumatic Diseases Strategy Trials and Registries(NORD-STAR)試験の結果をAnn Rheum Dis(2023; 82: 1286-1295)に発表。「未治療の早期関節リウマチ(RA)患者に一次治療から生物学的製剤(bDMARD)を使用した結果、従来型療法に比べ臨床転帰は著明に改善した」と報告した。

作用機序の異なるbDMARD間のhead-to-head試験

 早期RAに対する最適な一次治療については議論が続いている。未治療のRA患者に対するメトトレキサート(MTX)+ bDMARDがMTX単独よりも良い転帰をもたらしたとの報告は複数あるが、米国および欧州ではMTXをアンカードラッグとした従来型の合成抗リウマチ薬(csDMARD)を一次治療として推奨している。

 このアプローチの根拠として挙げられているのが、MTXやその他のcsDMARDに短期間のグルココルチコイドを上乗せすることで、bDMARDと同等の結果が得られるとする報告である。一方、bDMARDは、作用機序が異なっても全体として有効性に差はないとされている。しかし、早期RAにおけるbDMARDのhead-to-head試験はほとんどなく、bDMARD同士の有効性は間接的な比較に基づくものに限られている。

 今回、Østergaard氏らはスウェーデン、ノルウェー、アイスランド、オランダ、デンマーク、フィンランドの6カ国、29施設で、研究者主導による試験を実施し、最適化従来型療法(active conventional therapy)に対するセルトリズマブペゴル(TNFα阻害薬)、アバタセプト(T細胞選択的共刺激調節薬)、トシリズマブ(IL-6阻害薬)の優越性を検証した。

多重比較となるため有意水準をP=0.025に設定

 登録期間は2012年12月~19年12月。登録基準は、18歳以上の未治療早期RAで、罹病期間は24カ月未満。疾患活動性は中等度~重度(DAS28が3.2超)、リウマトイド因子(RF)または抗シトルリン抗体(ACPA)陽性とした。

 MTXはアンカードラッグとして全例に投与し、①最適化従来型療法(200例)、②セルトリズマブペゴル(203例)、③アバタセプト(204例)、④トシリズマブ(188例)ー に割り付けた。最適化従来型療法は、参加国の事情により、A(経口プレドニゾロン)あるいは、B(サラゾスルファピリジン/ヒドロキシクロロキン + 腫脹関節へのグルココルチコイド関節内注射)のいずれかとした。

 主要評価項目は48週時点のCDAI(Clinical Disease Activity Index)寛解(臨床アウトカム)および、van der Heijde-modified Sharp Score (vdHSS)(関節破壊進行アウトカム)としたが、最適化従来型療法群と各bDMARD群とのそれぞれで合計6つの仮説検証を行うことになるため、Dunnet法で多重検定の調整を行い、有意水準は0.025に設定した。

CDAIはセルトリズマブペゴルとアバタセプトで有意改善

 試験の結果、最適化従来型療法群、セルトリズマブペゴル群、アバタセプト群、トシリズマブ群の48週時点におけるCDAI寛解割合はそれぞれ、39.2%(95%CI 32.5~45.9%)、52.3%(同45.5~59.1%)、59.3%(同52.6~66%)、51.9%(同44.9~59.0%)だった。

 最適化従来型療法群との差はセルトリズマブペゴル群が13.1%ポイント(95%CI 3.5~22.6%ポイント、P=0.021)、アバタセプト群が20.1%ポイント(同10.6~29.5%ポイント、P<0.001)と、統計学的に優越性が示されたが、トシリズマブ群に関しては最適化従来型療法群との差は12.7%ポイント(同3~22.5%ポイント、P=0.030)と有意差はなかった。

 vdHSSは各群0.45、0.47、0.62、0.5と低く、群間差はなかった。

 重篤な有害事象は、10.7%、12.4%、8.3%、9.2%に見られたが、新しい安全性シグナルとなるようなものは検出されなかった。

費用効果や漸減・中止の可能性について検証必要

 以上の結果を踏まえØstergaard氏らは「6カ国で行った研究者主導試験で、800例の未治療・早期RA患者を登録できたことが本研究の強みだ。非盲検の試験なので、患者に主観的影響を与えた可能性は否定できないが、治療後の関節評価に携わった医師は患者がどの治療群であるかは知らされていなかった」と医師評価のバイアスは軽減できていると主張。

 その上で「一次治療からbDMARDを使用する場合の費用効果(cost-effectiveness)についてはさらなる検証が必要だが、寛解達成後、bDMARDを安全に漸減/中止することは可能との報告もあり、これについては、現在進行中のNORD-STAR試験の第2パートの中心テーマでもある」と今後の成果に期待を表明している。

木本 治