米・Washington University School of MedicineのErica K. Barnell氏らは、便中のRNA測定により大腸がんや前がん病変を検出する非侵襲的な検査法、mt-sRNA検査(商品名ColoSense、Geneoscopy社)を開発。45歳以上の約8,900例を対象に、医療機器クラスⅢとしての米食品医薬品局(FDA)承認申請を目的とした市販前第Ⅲ相試験CRC-PREVENTを行い、有用性を検討した。その結果、同検査は大腸がんと進行性大腸腺腫を高感度に検出し、特異度は他の非侵襲的な便潜血検査と同等だったとJAMA2023年10月23日オンライン版)に報告した。

受検率の改善に高精度の非侵襲的検査が必要

 大腸がんは米国におけるがん死因の第2位であるが、大腸がんの早期発見に有効とされる内視鏡検査の受検率は低い。最近、大腸がん検診の推奨に45~49歳の若齢層も含まれるようになったことから、受検率の低下に拍車がかかっている。こうした状況において、受検率の改善や高リスク患者に対象を絞り込んだ内視鏡検査施行のために、精度の高い非侵襲的検査法の開発が必要とされている。

 Barnell氏らは、2021年6月からの1年間に、米国49州の看護師コールセンターを通じオンラインで平均的な大腸がんリスクを有する45歳以上の参加者を募集。各地域の施設で便試料を採取して、盲検下で既存の便潜血検査とmt-sRNA検査(便中RNA転写産物8種の濃度を用いる)を実施した後、大腸内視鏡検査を施行してそれぞれの非侵襲的検査の結果と照合した。

 主要評価項目は、大腸がんと進行性大腸腺腫の検出におけるmt-sRNA検査の感度、大腸内視鏡で病変がなかった場合の特異度とした。

感度は94%、若年層でも良好

 同意が得られた1万4,263例のうち、大腸内視鏡検査を完遂し、基準を満たすデータを提供したのは8,920例〔平均年齢55歳(範囲45~90歳)、女性60%〕だった。自己申告による人種/民族はアジア系4.0%、黒人11.4%、白人83.5%で、45~49歳の若年層が23%を占めた。

 内視鏡検査で検出されたのは、大腸がんが36例(0.4%)、進行性大腸腺腫が606例(6.8%)だった。

 大腸がんの検出感度は、便潜血検査の77.8%(95%CI 61~90%)に対しmt-sRNA検査では94.4%(同81~99%)と有意に高かった(McNemarのP=0.01)。進行性大腸腺腫の検出感度はそれぞれ28.9%(同25~33%)、45.9%(同42~50%)と、こちらもmt-sRNA検査で有意に高かった(McNemarのP<0.001)。

 45~49歳の若齢層では、mt-sRNA検査による大腸がんの検出感度は100%、進行性大腸腺腫の検出感度は45%と、良好な感度が維持された。

 大腸内視鏡で病変がなかった場合のmt-sRNA検査の特異度は87.9%(95%CI 87~89%)だった。

 Barnell氏らは、「mt-sRNA検査は、大腸がんおよび進行性大腸腺腫に対する精度の高い非侵襲的検査になりうる」と結論。「RNAバイオマーカーは年齢に関連したDNAメチル化の影響を受けにくく、mt-sRNA検査は45~49歳の若齢層においても高い感度と、他の検査と同等の特異度を維持しうる。また今回、参加者の募集はソーシャルメディアを通じて行われたが、大腸がん検診に消極的な人に対する今後の受検啓発に同様の方法が有用かもしれない」と付言している。

(小路浩史)