免疫チェックポイント阻害薬(ICI)はがん治療を革新させたが、免疫関連有害事象(irAE)を引き起こすことがある。irAEの管理には一般的に全身ステロイドが用いられるが、ステロイドがICIの効果を減弱させる可能性が指摘されていた。米・St Joseph's Medical CenterのInga V. Buren氏らは、ICI治療を受けた約2万例を対象に多施設後ろ向きコホート研究を行い、ステロイド使用および使用時期と生存との関連を検討。irAE管理目的でのステロイド投与は、ICI開始後早期の場合に生存期間の短縮と関連することをJAMA Netw Open2023; 6: e2340695)に報告した。

ICI開始後5年全生存を検討

 2010年1月~21年末にがんに対するICI治療を受けた退役軍人を、多施設後ろ向きコホート研究に登録した。適格患者は、明確ながんの初期診断ののち、ICI※1を1回以上投与された者。全身ステロイド※2使用群と非使用群に分け、さらにirAEの有無で層別化した。ステロイド使用のうち、ICI治療前の緩和ケア目的や輸液時の注射部位副作用の予防目的、単回のみの場合は、irAE管理以外の理由によるものと見なし、これら以外の使用パターンをirAE管理目的での投与と見なした。

 irAE管理目的でステロイドを使用した患者を、ステロイド使用時期とICI継続状況によってさらに層別化し、サブグループ解析を実施した。

 主要評価項目は、ICI開始後5年の追跡における全生存(OS)とした。

irAE管理のためのステロイド使用でOS延長

 2万163例を解析に組み入れた。ステロイド使用群は1万2,221例(平均年齢69.5歳、男性96.8%、白人76.9%)、ステロイド非使用群は7,942例〔同70.3歳、97.5%、76.6%)だった。

 OSの中央値は、irAE非発現患者の10.5カ月〔四分位範囲(IQR)3.5~36.8カ月〕に比べirAE発現患者では17.4カ月(同6.6~48.5カ月)と有意に長かった〔調整後ハザード比(HR)0.84、95%CI 0.81~0.84、P<0.001〕。

 irAE管理以外の理由でステロイドを使用した患者(OS中央値13.6カ月、IQR 5.5~33.7カ月)、またはステロイド非使用患者(同9.8カ月、3.9~27.6カ月)と比べ、irAE管理のためにステロイドを使用した患者ではOSが有意に長かった(同21.3カ月、9.3~58.2カ月、P<0.001)。

ICI開始2カ月以降のステロイド使用でOS最長

 irAE管理のためにステロイドを使用した患者を、ステロイド使用時期(ICI開始から2カ月未満かそれ以降か)とICI継続状況(中止か継続か)により4群に層別化して比較した結果、ステロイド使用時期により生存期間に差が認められた。

 OSが最も長かったのは、ICI開始2カ月以降にステロイドを使用しICIを継続した群(OS中央値29.2カ月、IQR 16.5~53.5カ月)で、最も短かったのは、ICI開始後早期にステロイドを使用しICIを中止した群(同4.4カ月、1.9~19.5カ月)だった。

 ステロイドの早期使用は、ICIを継続した場合にもOSの短縮と関連していた(OS中央値16.0カ月、IQR 7.1カ月~未達)。また、ICI開始2カ月以降にステロイドを開始しても、ICIを中止した場合にはOSは短縮した(同16.0カ月、8.0~42.2カ月)。

 使用したステロイドの種類やICIのターゲットによっても生存期間に差が見られた。

 以上の結果から、Buren氏らは「irAE管理のためにステロイドを投与してもICIの生存便益が損なわれることはないが、ICI開始後2カ月以内の早期投与は、ICI治療を継続した場合でも生存期間の短縮と関連する」と結論づけている。

※1:アテゾリズマブ、アベルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ
※2:デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロンの1回以上投与(静脈内、筋肉内、経口)と定義

(小路浩史)