長崎大学大学院消化器内科学分野の佐々木龍氏らは、2型糖尿病を合併する慢性肝疾患(CLD)患者72例を対象に、間歇スキャン式持続グルコースモニター(isCGM、商品名FreestyleリブレPro)による血糖測定と肝関連イベントとの関連を単一施設後ろ向き研究で検討。その結果、isCGMで検出される低血糖は肝関連イベント発生の予測因子になることが示されたとSci Rep2023; 13: 13791)に発表した。

検出した低血糖イベントの55%が夜間低血糖

 解析対象は、2017年4月~18年7月に長崎大学病院でisCGMの使用を開始した2型糖尿病を合併するCLD患者72例(男性49例、女性23例)。ベースラインの年齢は67.5歳、BMIは24.15、HbA1cは6.60%、糖尿病罹病期間は9.0年だった(全て中央値)。全例が血糖降下薬を使用しており、25.0%がインスリンを使用していた。88%が肝硬変を有し、48.6%に肝がん既往歴があった。

 isCGMによる血糖測定は、上腕の皮下組織に挿入したセンサーにより15分間隔で最長14日間行い、測定値は自動的に読み取り装置にワイヤレスで送信された。1~3カ月ごとまたは入院時にフォローアップを行い、2021年4月まで追跡。血糖自己測定値と肝関連イベント(消化管出血感染症腹水、脳症、肝関連死など)との関連を検討した。

 解析の結果、isCGM測定による平均血糖値の標準偏差(SD)の中央値は41.55mg/dL〔四分位範囲(IQR)36.15~53.15mg/dL〕、変動係数(CV)の中央値は29.6%(同24.7~34.7%)だった。

 72例中35例(48.6%)で低血糖が観察され、目標血糖範囲を下回る低血糖域(70mg/dL未満)にある時間の割合(time below range)の中央値は1.0%(IQR 0.0~2.0%)だった。また、低血糖イベントの55.0%が夜間(0時~5時59分)に検出されていた。

無イベント生存に低血糖が関連、血糖変動は関連せず

 中央値で35.0カ月の追跡期間中に発生した肝関連イベントは28件(脳症9件、腹水8件、消化管出血7件、重症感染症4件)で、1年無イベント生存率は74.6%だった。

 無イベント生存率は、平均血糖値、SD、CVで層別化した2群間の比較(中央値以上の群 vs. 中央値未満の群)では有意差がなく、血糖変動と肝関連イベントとの有意な関連は認められなかった。しかし、低血糖の有無で層別化した解析では、低血糖非発生群に比べて発生群で無イベント生存率が有意に低かった(P=0.007)。

 多変量Cox比例ハザードモデルによる解析では、Child-Pugh分類B(ハザード比2.347、95%CI 1.042~5.283、P=0.039)および低血糖(同2.279、1.064~4.881、P=0.034)と肝関連イベント発生との有意な関連が認められた。

 以上を踏まえ、佐々木氏らは「isCGMで検出される低血糖と肝関連イベントには有意な関連があり、isCGMは血糖測定に加え肝関連イベントの発生予測においても有用であることが示された」と結論。「今後の研究で、isCGM測定に基づく低血糖に対し治療介入を行うことで、肝関連イベントが減少するかどうかを検討する必要がある」と付言している。

太田敦子