NHKの報道番組「ニュースウオッチ9」が、新型コロナウイルスのワクチン接種後に亡くなった人の遺族を、コロナ感染で死亡した人の遺族のように伝えた問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(小町谷育子委員長)は5日、「放送倫理違反があった」と結論する意見書を発表した。
 問題となったのは、5月15日に放送した約1分間の映像。ワクチン被害を訴える遺族団体に属する3人の声を紹介したが、その属性を説明せず、コロナ感染で亡くなった人の遺族と誤認させるような形で放送した。
 VTR制作の担当者は映像編集部署に所属し、取材経験が不十分だったが、必要なサポートを受けられず、放送前の試写でもチェック機能が働かなかったことなどを意見書は問題視。3人の遺族の声を切り取り、わずか24秒で伝えたことを「『人の死』の伝え方として、あまりにも『軽かった』」などと指摘。「視聴者の信頼を裏切り、遺族の心情を傷つける結果を招いた」と批判した。
 NHKは既に「伝え方が適切ではなかった」と謝罪し、関係する職員を懲戒処分にしている。5日、改めて「BPOの指摘を真摯(しんし)に受け止める。取材・制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする姿勢を再確認し、ジャーナリズム教育の徹底などの再発防止策を着実に実行する」とのコメントを発表した。 (C)時事通信社