加齢に伴い疾患リスクや薬剤による副作用リスクが高まることが指摘される。オーストラリア・University of SydneyのBonnie M. Liu氏らは、抗コリン作動薬などの薬剤負荷指数(DBI)で評価した転倒・認知機能リスクを検討するシステマチックレビューを実施。結果をJ Am Geriatr Soc(2023年11月25日オンライン版)に報告した。

臨床試験65件、動物実験5件をレビュー

 副作用などへの配慮や安全管理が特に必要な高リスク薬。処方に関して米国老年医学会は、高齢者における潜在的な不適切使用に関する独自基準を設け、幾つかの抗コリン作動薬および鎮静薬をリスト化するなど、複数のツールが開発されている。 そこでLiu氏らは、システマチックレビューによりDBIと身体機能アウトカムとの関連を検討した。 なお、試験ごとにDBIの評価法などが異なるため、メタ解析は不適切と判断した。

 対象は2007年4月1日〜22年12月31日にMEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、CINAHL、PsycINFO、Trial Registries、ClinicalsTrials.gov、Australian New Zealand Clinical Trial Registryなどに登録された薬剤負荷リスクに関する臨床試験(18歳以上)および動物実験。 6,250件のうち、身体機能、老年症候群(転倒、フレイル、せん妄、認知機能低下)、死亡などを評価した70件(うち臨床試験65件)をレビュー対象とした。

 65件の内訳は横断研究38件、後ろ向きコホート研究14件、前向きコホート研究11件、症例対照研究1件、混合前向きおよび後ろ向きコホート研究が1件で、対象は地域在住者が36件、入院患者が13件、介護施設入居者が11件など。 年齢の中央値は46〜87歳。 一方、動物実験5件はいずれもマウス〔若齢(5カ月)、中齢(12カ月)、老齢(24カ月)〕を使用したランダム化比較試験だった。

DBI上昇と転倒、身体および認知機能低下リスクが有意に関連

 臨床試験65件における評価項目数の内訳は、身体機能56件、認知機能19件、転倒14件、フレイル7件、死亡9件などだった。 DBIは平均が0.11〜2.08、中央値は0〜1.16だった。

 評価項目別に検討した結果、DBI高値と転倒(14件中11件、79%)、身体機能低下(56件中31件、55%)、認知機能低下(19件中11件、58%)の各リスクの増加に有意な関連が認められた。 一方、動物実験5件では身体機能18件、フレイル2件、死亡1件が評価され、DBI高値と身体機能の低下およびフレイルのリスク上昇との関連が確認された。

 Liu氏らは、今回の結果から「われわれのシステマチックレビューにより、臨床試験ではDBI高値と転倒、身体および認知機能低下のリスク上昇、動物実験ではDBIの上昇と身体機能およびフレイルのリスク上昇との関連が示唆された」と結論した。

「一方、死亡、入院および入院日数の増加、フレイルの悪化、QOL低下の各リスクとの関連には一貫性がなく、アウトカム改善との関連を示したデータもない」と付言。「DBIは高齢者における身体および認知機能のリスク評価ツールとして有効であり、DBIの評価法の均一性を図ることで、より精度の高いシステマチックレビューが可能になるだろう」とコメントしている。

編集部