特集

ビッグデータ活用で医療費適正化推進
~総務大臣賞の佐賀市の介護予防DX(1)~ 21年度「第6回地方公共団体における統計データ利活用表彰」より

 デジタルトランスフォーメーション(通称DX)は、スウェーデンの大学教授のエリック・ストルターマンが提唱した概念であり、「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」(総務省「自治体DX全体手順書」から引用)とされているが、その定義は幅広く捉えることができる。そんなDXを介護予防に取り入れ、2021年度「第6回地方公共団体における統計データ利活用表彰」総務大臣賞を受賞した佐賀市の取り組みを紹介する。(佐賀市保健福祉部高齢福祉課長寿推進係長 菅祐亮・介護予防係保健師 納江幸子)

図表1 佐賀市の高齢化率

 ◇佐賀市における少子・高齢化の課題

 佐賀市は、05年と07年の市町村合併を経て、北部の緑豊かな山々、中部の肥沃(ひよく)な田園地帯、南部の宝の海・有明海といった豊かな自然環境に恵まれた人口約23万人のまちである。

 また、多様な歴史や個性あふれる文化は、幕末・維新期の動乱の中に時代を切り開いた佐賀藩10代藩主の鍋島直正公をはじめ、多くの先人たちが築いた賜物であり、今を生きるわれわれが先人たちの思いを未来の子どもたちへつなぐために、さまざまな取り組みを行っているところである。しかしながら、当市も例に漏れず人口減少による少子高齢化が進展し、担い手不足による地域力の低下や医療費・介護給付費の増加など多くの課題に直面している。

 当市の高齢化率は20年に28.3%になり、住民基本台帳に基づく人口推計によると、25年は約30%に達し、さらに20年後の40年には約34%と見込まれている(図表1)。

 当市には15の日常生活圏域があるが、特に山間部の人口減少と少子高齢化は顕著である。最も高齢化率が高い地区の20年時点の高齢化率は43.4%で、最も低い中心部の地区(22.2%)の約2倍となっており、市内においても地域間格差がある。

 また、高齢者人口の年齢構成を見ると、05年までは65〜74歳までの前期高齢者の人口が75歳以上の後期高齢者の人口を上回っていたが、07年に人口比が逆転し、以降、後期高齢者の人口が上回るようになった。

 25年の人口推計によると、高齢者人口の約57%を後期高齢者が占め、20年後の40年には約60%を占めると見込まれている(図表2)。

 当市の要支援・要介護認定率は、20年時点で20.0%であるが、高齢化率と後期高齢者人口割合のアップにより、今後は要支援・要介護認定率も上昇が見込まれることから、さらなる地域力の低下が懸念され、行政も地域も将来への危機感を強めている。

図表2 佐賀市の高齢者人口の推移

 ◇佐賀市の高齢者の実態

 当市では、約30年前の1991年から65歳以上の高齢者を対象に世帯状況や健康状態、緊急連絡先、外出頻度や交通手段の生活状況等の調査を実施している。調査は、高齢者約6万5000人(2021年)のうち、あらかじめ市が把握している施設入所者や入院者等を除く在宅高齢者約6万3000人(21年)の全戸を対象としている。民生委員の見守りを兼ねた訪問による聞き取り方式で、介護保険の計画策定のためのアンケート調査の年を除く3年に2回の間隔で実施している。

 調査年の20年はコロナ禍に加えシステム改修のために休止したが、最新の21年の調査はコロナ禍により4月実施予定が大幅に遅れて10月開始となり、12月には調査を終える予定である。

 そのため、集計を終えている最新の調査は19年となる。この調査による当市の高齢者の住居等の実態は、65歳以上の高齢者6万3464人のうち、在宅が5万5678人で87.7%を占め、高齢者福祉施設および介護福祉施設等が4869人で7.7%、医療機関への入院が1441人で2.3%、その他が1476人で2.3%となっている(図表3)。

図表3 65歳以上高齢者63,464人の住居等の実態

 また、在宅高齢者の世帯構成を見ると、家族と同居が2万7541人で49.5%と最も割合が高く、次いで、高齢者のみ世帯が1万8868人で33.9%、高齢者の単独世帯が9269人で16.6%となっている(図表4)。つまり、高齢者の約半数が高齢者のみで生活していることになる。

 続いて、在宅高齢者の身体状況については、元気と回答した人が4万8535人で87.2%と最も割合が高く、次いで、虚弱と回答した人が5090人で9.1%、介護が必要と回答した人が2053人で3.7%となっている(図表5)。これらは本人聞き取りによる主観での回答であるため、医学的な根拠に基づく状態とは限らないが、9割近くの人が自身では元気であると思っているという結果となった。

図表4 在宅高齢者の世帯構成

 これらのことから、自身では元気と認識している高齢者が多いものの、約半数が高齢者のみで生活し、今後はますます高齢者のみ世帯や高齢者の単独世帯が増加する見込みであるため、人口構造や社会環境の変化を見据えた施策が必要となってくる。

図表5  在宅高齢者の身体状況

 ◇佐賀市の高齢者施策のビジョン

 市町村は、高齢者施策全般に関わる理念や基本的な方針・目標等については、老人福祉法に基づき高齢者の福祉に関わる総合的な計画を定めることとなっており、当市でも、21年から23年の佐賀市の高齢者福祉施策のビジョンとして「高齢者保健福祉計画」を策定している。

 本計画において、25年までの中長期的に目指す姿として、「住み慣れた地域で支え合い、自分らしく自立した生活ができるまち」を掲げており、四つの基本目標と具体的な事業である重点取り組みで構成されている。

 四つの基本目標として、①地域で支え合う仕組みづくり②認知症施策と高齢者の権利擁護の推進③健康づくりと介護予防の推進④自立と安心につながるサービスの充実──があり、重点取り組みとして、地域包括支援センターの機能強化や医療機関・介護サービス事業者等関係者との連携強化、成年後見制度の利用促進、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施などを掲げている。中でも、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施は、法改正によって20年4月から全国で開始されている医療・介護・健診等データを活用した事業である。当市では、本事業に、独自で集約したデータの活用や民生委員等地域の支援者との連携の仕組みづくりなどの新たな取り組みを追加し、「介護予防DX」として推進している。

 佐賀市の介護予防DXの目指す成果は大きく二つある。一つ目は、ビッグデータを活用したエビデンスに基づく医療費・介護給付費の適正化で、二つ目は、生活習慣病予防・介護予防による高齢者の生活の質(QOL)の確保・向上および健康寿命の延伸である。

 これらの成果目標を達成するために、当市では、介護の重度化予防が可能な疾病に着目した取り組みを介護予防DXの一丁目一番地としている。

 介護の重度化予防が可能な疾病とは、糖尿病や高血圧等の生活習慣病を指しており、20年の佐賀市の後期高齢者医療制度の疾病別医療費の割合において28%を占めている(図表6)。

図表6

  • 1
  • 2

新着トピックス