カナダ・ICES Western/Western UniversityのFlory T. Muanda氏らは、高齢の慢性腎臓病(CKD)患者における低用量メトトレキサート(MTX)の安全性をヒドロキシクロロキン(HCQ)と比較する後ろ向きコホート研究を実施。その結果、低用量MTX群における投与開始後90日間の重篤な有害事象の発現リスクはHCQ群の約2倍に上ったとJAMA Netw Open2023; 6: e2345132)に発表した。

発現率は1.73% vs. 3.55%

 関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療に用いられるMTXは腎排泄性であるため、CKD患者への投与は低用量から開始することが推奨されている。低用量でも骨髄抑制などの重篤な有害事象のリスクが報告されているが、CKD患者でリスクが上昇するかどうかは明らかでない。

 そこでMuanda氏らは、カナダ・オンタリオ州の2008~21年のレセプトデータベースから、推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満で透析および腎移植を受けていない66歳以上のCKD患者を特定。1:1の傾向スコアマッチングを用い、低用量MTX(5~35mg/週)またはHCQ(200~400mg/日)の投与を新規に開始した患者4,618例(年齢中央値76歳、女性69%)を抽出し、有害事象リスクを比較検討した。

 その結果、主要評価項目とした投与開始後90日間の重篤な有害事象(骨髄抑制、敗血症、肺毒性または肝毒性による医療機関の受診)の発現は、HCQ群の40例(1.73%)に対し低用量MTX群では82例(3.55%)に上った〔リスク比(RR)2.05、95%CI 1.42~2.96、リスク差(RD)1.82%、95%CI 0.91~2.73%〕。

eGFR低値、MTX用量15mg/週以上でさらにリスク増

 サブグループ解析では、ベースラインのeGFRが低値だと重篤な有害事象のリスクが有意に上昇することが示され、eGFR最低値(45mL/分/1.73m2未満)のHCQ群に対する低用量MTX群におけるRRは2.79(95%CI 1.51~5.13、加法交互作用のP=0.003、乗法交互作用のP=0.008)だった。

 さらにMTXの用量別に解析を行った結果、HCQ群に対し15~35mg/週のMTX群では重篤な有害事象のリスクが高かった(1.18% vs. 3.83%、RR 3.25、95%CI 1.87~5.64、RD 2.65%、95%CI 1.49~3.82%)。しかし、5~15mg/週未満のMTX群ではリスク上昇が認められなかった(1.82% vs. 2.81%、同1.55、0.90~2.64、0.99%、-0.22~2.20%)。

 以上を踏まえ、Muanda氏らは「CKD患者に低用量MTXを処方する際は、リスク・ベネフィットを十分に評価し、血液検査および胸部X線検査を含む定期検査を行って骨髄抑制、感染症、肝毒性、肺毒性の徴候をモニタリングすべきである」と結論している。

(太田敦子)