治療・予防

癒着やねじれで詰まる腸閉塞 
手術後の後遺症で発症

 小腸や大腸の一部が狭くなったり動きが低下したりすることで食物や消化液などの流れが滞り、腹痛や腹部膨満感、吐き気などを起こす腸閉塞(へいそく=イレウス)。腹部の手術経験のある人で起こりやすい。横浜市立大学医学部(横浜市)消化器・腫瘍外科の石部敦士講師に聞いた。 

 ▽腹部手術で癒着

 腸閉塞の発症原因はさまざまだが、腹部手術の後遺症で腸管と腹壁、腸管同士が癒着して腸管が狭くなる、または腸管にできた腫瘍が腸管をふさぐ「機械的イレウス」が多いとされる。特に最も頻度が高いのは、腸管に癒着が生じる癒着性イレウスだ。「腹部の開腹手術時には腸管が外気に触れて、動きが止まるため、冷えたり、乾燥したりして癒着を起こしやすくなります」と石部講師。他に、開腹手術後の腸管の運動まひ、腹膜炎などによる腸管の炎症が原因で腸管の動きが低下する「機能的イレウス」もある。

 近年、身体への負担の少ない腹腔(ふくくう)鏡手術や、術後早期にベッドを離れて体を動かし、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促す指導などが普及し、術後に生じる腸閉塞は減っている。だが、一度腸閉塞を発症すると、激しい腹痛がたびたび、または持続的に起こり、嘔吐(おうと)や腹部の強い張り、便秘などを引き起こす。「術後の腸管の癒着は症状が徐々に進む場合が多く、中には術後10年後に腸閉塞になったケースもあります」と話す。

 ▽食物繊維は逆効果

 腸閉塞のほとんどは手術以外の方法(保存的治療)で軽快する。通常は飲食を止めて胃腸を休め、点滴で栄養と水分を補給しながら経過を見る。おなかの張りが強い場合は、イレウス管という管を鼻から腸に入れ、閉塞した部分にたまった食べ物などを吸引、腸管内の圧力を下げることもある。

 保存療法で症状が改善しなければ手術を検討する。「腸閉塞で最も重篤なのは、腸がねじれて血行障害を起こす絞扼(こうやく)性イレウスです。腸が壊死(えし)して穴が開いたり、敗血症になったりして死に至る例もあるため、緊急手術を行います」と石部講師。

 腸閉塞には確立された予防法はない。ただし、早食いや暴飲暴食を避け、消化の悪い食品は控えめにし、規則正しい食事や排便を心掛けることが大切だ。「便秘解消のために食物繊維の豊富な海藻類やキノコ類、イモ類などを大量に取る人がいますが、水を含んで腸が詰まりやすいので逆効果です。水分を小まめに取り、よくかんで食べ、適度な運動を心掛けましょう」とアドバイスする。 (メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


新着トピックス