【北京時事】中国政府が新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策を終了してから1年。各地で行われていたロックダウン(都市封鎖)は過去の話となり、日常生活や企業活動は正常化に向かった。ただ、約3年続いたゼロコロナが経済に残した傷痕は根深い。封鎖解除でも期待されたようには景気は浮揚せず、冷え込んだままだ。
 「売り上げはコロナ前の7割程度だ」。広東省広州市のタクシー運転手はこう打ち明けた。市内では昨年、感染対策として、断続的に地区の封鎖が行われた。「失職した後、新しい仕事を見つけられない人も多い。景気は良いわけがない」と語気を強めた。
 中国国家統計局によると、昨年12月に前年同月比1.8%減だった小売売上高は今年以降、プラス成長となっている。ただ、経済が混乱した前年の反動の側面が大きく、今年10月の前月比は0.07%の微増にとどまる。不動産不況が長期化する中、1~10月の不動産開発投資は前年同期比9.3%減と大幅なマイナス。統計局が毎月開く記者会見では「景気は回復に向かっているが、内需は依然不足している」といった内容の説明が「定例化」した。
 統計局は7月分以降、高止まりしていた若者の失業率に関するデータの公表を行っていない。当局は社会不安の高まりにつながる事態に懸念を深めているもようだ。
 中国政府は今年に入り、事実上の政策金利を引き下げるなど金融緩和を強化してきた。10月には景気対策に充てるため、国債1兆元(約21兆円)を追加発行する方針を決定。市場では「共産党内で景気に対する厳しい認識が広がっている可能性がある」(専門家)との見方が強まっている。党と政府は近く開く「中央経済工作会議」で、来年の成長率目標などを話し合う方針だ。 (C)時事通信社