岸田文雄首相は、現行の健康保険証を2024年秋に廃止しマイナンバーカードに一本化する方針を改めて表明した。保険証と一体化した「マイナ保険証」を巡っては、別人の情報が誤って登録されるケースが多数発覚し、国民の不信感が拡大。政府はひも付けに当たっての確認作業の徹底など再発防止策を講じたが、医療現場でのマイナ保険証の利用は低迷が続く。
 河野太郎デジタル相は22年、現行保険証を24年秋をめどに廃止し、マイナ保険証に切り替える方針を表明。マイナカード取得者に最大2万円分のポイントを付与する「マイナポイント」の効果もあり、登録者数は大きく伸びた。デジタル庁によると、11月時点でマイナ保険証の累計登録数は約7170万件となった。
 だが、医療現場での患者の利用は伸び悩む。患者の保険証の資格をオンラインで確認するシステムでマイナ保険証を読み込んだ件数(10月実績)はわずか4.5%。一連のトラブルで国民に懸念が広がったことが影響した格好だ。
 政府はこれまで総点検に加え、不安払拭に向け、マイナ保険証を持たない人向けに有効期限が最長5年の「資格確認書」を発行すると公表。カードを持つのが不安な高齢者らを想定し、暗証番号の設定が不要なマイナカードも導入する。今年度補正予算には、マイナ保険証の利用率が増えた医療機関などへの支援も盛り込み、活用拡大にも躍起となっている。
 河野氏は12日の記者会見でこうした利用促進策に触れた上で、「より良い医療を提供するため、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)は進めなければならない」とマイナ保険証の意義を強調した。ただ、今後医療現場で利用が広がるかは楽観できない。厚生労働省幹部は「実際に使ってもらえば意識は変わる。一人でも多くの人に利便性を理解してもらうよう、地道に取り組むしかない」と語った。 (C)時事通信社