第33次地方制度調査会(首相の諮問機関)は15日の総会で、大規模な災害や感染症などにより想定外の事態が発生した場合に備え、国が必要な指示を自治体に出せる仕組みづくりを求める答申を取りまとめた。国民の安全に重大な影響を及ぼす危機に対し、迅速な対応を可能とする狙いだ。地制調は年内にも、岸田文雄首相へ提出。政府は2024年通常国会への法案提出を検討する。
 新型コロナウイルスが流行した当初、感染症対策に関する法律では、広域的な患者の移送や入院調整は想定されておらず、法改正が必要となった。これを教訓に、地制調は非常時に備えた国と地方の関係をあらかじめ整理して、一刻を争う事態にも対応できるよう検討してきた。
 現行では、地方自治法に国から地方に対する「是正の指示」「是正の要求」の仕組みがあるが、自治体の事務処理に法令違反がなければ出せない。そこで答申は、非常時の国の指示権を自治法に定めることを提言。ただ、国と地方は対等とする分権改革の考え方を踏まえ、あくまで特例と位置付ける。指示は必要最小限度の範囲にとどめ、発動の際は閣議決定による手続きを求めた。
 答申はこのほか、危機に見舞われた自治体で職員確保が課題となることから、自治体間の職員応援・派遣に関して国の役割の明確化を提案。国が調整して、応援の要求・指示や派遣のあっせんを行う。
 答申は、デジタル化を踏まえた方向性も示した。住民や事業者から自治体への公金納付で、キャッシュレス化と収納事務の効率化を推進するため、地方税ポータルシステム「eLTAX(エルタックス)」を活用する必要性を強調。自治体の情報セキュリティー対策では、国が法的拘束力のある指針を定めて、自治体に対応方針の策定を義務付けるべきだと結論付けた。 (C)時事通信社