オランダ・Amsterdam University Medical CentresのE. G. Tiebie氏らは、食道食塊完全閉塞で救急外来を受診した患者にコーラを摂取させ症状改善を待つランダム化比較試験(RCT)を実施。「自然消失を待った対照群に比べ、コーラ摂取をした介入群で有意な改善効果は得られなかった」とBMJ(2023; 383: e077294)に報告した。

薬物治療は認められているが明確な効果の報告はない

 欧米の消化器内視鏡学会のガイドラインでは、食道食塊完全閉塞に対しては6時間以内の、同部分閉塞に対しては24時間以内の緊急内視鏡を推奨しているが、内視鏡処置の開始を遅らせないという条件で、事前の薬物治療を認めている(Endoscopy 2016;48:489-496Gastrointest Endosc 2011; 73: 1085-1091)。しかし、これまでに行われたグルカゴン、硝酸、ブチルスコポラミンの試験では、限られた効果や相矛盾する結果が報告されている。

 一方、コーラを使用することで、食道食塊閉塞患者の50%以上で症状が消失したとする報告が複数あることから(Afr J Emerg Med 2019; 9: 41-44)、Tiebie氏らはRCTでの検討を行った。

1回25mLのコーラを8回まで摂取

 試験は2019年12月22日~22年6月16日にオランダの5施設の救急外来(ED)で実施された。食道食塊完全閉塞で来院した18歳以上の51例を介入群(28例)と対照群(23例)にランダムに割り付けた。平均年齢は介入群が58歳(範囲23~86歳)、対照群が54歳(同22~82歳)で、男性が19例(68%)と16例(70%)だった。

 閉塞の原因となった食塊の約8割は食肉で、残りはバン、フライドポテト、ザウアークラウト(キャベツの漬物)などであった。

 介入群には1回25mLのコーラを1分間隔で最大8回(200mL)まで摂取してもらい、対照群は何も摂取せず、症状の自然消失を待った。

 患者報告による完全通過(complete passage)と部分通過(partial passage)の複合を食道食塊閉塞の改善と定義し、これを主要評価項目とした。完全通過の患者では症状の完全消失と唾液の飲み込み能力の回復が見られた。副次評価項目は介入に関連した、治療や入院延長を必要とする有害事象(食道穿孔、粘膜裂傷、出血、誤嚥など)とした。

 症状が完全消失した患者に内視鏡処置は行わなかったが、待機処置として内視鏡検査を実施した。

重篤な有害事象はなく完全通過例は若干多かった

 試験の結果、食道閉塞の改善が見られたのは、対照群の14例(61%)に対し、介入群は17例(61%)だった〔オッズ比(OR)1.00(95%CI 0.33~3.1)、相対リスク低下 0.0(同-0.55~0.36、P>0.99)〕。

 完全通過例の割合は介入群の方が多かったがこれについても有意差はなかった〔対照群8例(35%)、介入群12例(43%)、P=0.58〕。

 重篤な有害事象は発生しなかったが介入群の6例(21%)がコーラ摂取後、一時的な不快感を経験した。

 以上の結果についてTiebie氏らは「コーラ摂取は食道食塊完全閉塞の有意な改善をもたらさなかった。しかし、重篤な有害事象はなく、コーラ摂取により症状が消失した例も一定数存在したことから、内視鏡処置を遅らせない範囲でコーラ摂取を検討してもいいかもしれない」と述べている。

木本 治