2024年度予算案で、医療や介護、年金に充てる社会保障関係費は37兆7193億円に上り、過去最高を更新した。診療報酬改定は、医療従事者の処遇改善に予算を投じる必要もあり、歳出抑制の効果は限定的となった。また、介護保険サービス利用者のうち一定の所得がある人を対象とした自己負担引き上げも見送り、高齢化に伴う費用増加への対応に課題を残した。
 診療報酬改定は、医療従事者の処遇改善が焦点だった。一方で、少子化対策に回す財源の捻出や医療費抑制も求められ、政府・与党内での調整は「過去最高難度」(厚生労働省幹部)となった。結果として、人件費に当たる「本体」部分はプラス0.88%で決着。薬の公定価格である「薬価」はマイナス1.00%で、全体でもマイナス改定となったが、国費抑制効果は400億円程度にとどまった。
 24年度の制度改正に向けて議論してきた介護分野では、原則1割の支払いを求めているサービス利用料を巡り、所得に応じて2割を負担する人の対象範囲を拡大する案の見送りが決まった。物価高騰の中で高齢者の暮らしに悪影響を及ぼすべきではないといった慎重意見が与党などから相次ぎ、実現に至らなかった。 (C)時事通信社