特集

新薬開発で日本回避懸念
製薬各社、薬価改定に反発

日本製薬工業協会の畑中好彦会長
 高齢化進展による増加基調の社会保障費を抑制するため、厚生労働省が昨年末に決定した医薬品の公定価格(薬価)の抜本改革に対し、製薬各社の反発が収まらない。日本製薬工業協会の畑中好彦会長(アステラス製薬社長)は「国民皆保険維持は、社会保障全体で議論すべきで、薬価だけで財政の調整をするのは限界に来ている」と指摘し、「革新的新薬の研究開発や安定供給を著しく阻害する」と批判した。

 ◇しわ寄せは製薬業界に

 社会保障費抑制では、医療費全体の抜本的な見直しが期待されていたが、医師の診察料は引き上げられる一方で、しわ寄せを被ったのは薬剤費。革新的新薬などの薬価引き下げを一定期間猶予する「新薬創出加算制度」が大幅に縮小され、日本での新薬開発を後回しにする「ドラッグ・ラグ」問題の再燃が懸念されている。製薬各社が新薬開発で従来のように欧米を優先し、日本を後回しにすれば、最新の抗がん剤などが国内で使える時期が遅れる恐れがある。

 新薬開発は10年程度の期間と1000億円以上の費用がかかるが、既存薬と効き目に大幅な差異が出なかったり、重篤な副作用が見つかったりすると、開発中止もあるリスクが高いビジネス。化学合成による従来の医薬品とは異なり、遺伝子工学を応用し、微生物や動物細胞など生物由来の物質から作るバイオ医薬品も登場し、開発費はさらに膨らんでいるのが現状だ。


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