多汗症では、視床下部の障害により交感神経系(SNS)が過剰に活性化され、反射回路の神経原性の興奮性が高まる。既報では、SNSの過剰活性化は代謝症候群、肥満、インスリン抵抗性のリスクを高めることが示されている。しかし、多汗症と2型糖尿病の関連については明らかでない。そこで台湾・MacKay Memorial HospitalのChih-Kai Wong氏らは、台湾国民健康保険研究データベースを用いて両者の関連を検討。多汗症患者の糖尿病リスクは、多汗症のない人に比べ2.44倍と高いことをKaohsiung J Med Sci(2023年12月26日オンライン版)に発表した。
多汗症群702例と対照群7,020例を比較検討
対象は、1998年1月1日~2012年12月31日に皮膚科医により2回以上多汗症と診断され、糖尿病の既往がない18歳以上の患者702例(多汗症群、平均年齢39.69±10.64歳、男性305例、女性397例)と、年齢、性、所得、居住地、合併症をマッチングした7,020例(対照群、同39.69±10.63歳、3,050例、3,970例)。2型糖尿病の診断、死亡、2013年12月31日のいずれか早い時点まで追跡し、糖尿病リスクを比較検討した。
2型糖尿病関連入院リスクは5倍超
追跡期間中の2型糖尿病の発症は、多汗症群が38例(1,000人・年当たり6.75)、対照群が160例(同2.79)に認められ、発症リスクは多汗症群で2.44倍と有意に高かった〔ハザード比(HR)2.44、95%CI 1.70~3.49、P<0.001〕。
多汗症と2型糖尿病の関連に性差はなく〔男性:調整後ハザード比(aHR)3.42、95%CI 2.11~5.53、女性:同3.00、1.84~4.87)。登録時の年齢層別に見ても、30~39歳例ではaHR2.44(95%CI 1.20~4.93)、40歳以上では同2.42(同1.53~3.83)と、一貫したリスク上昇が認められた。
さらに、対照群に比べ多汗症群では、2型糖尿病関連入院のリスクが約5倍と高かった(HR 5.02、95%CI 2.03~12.42)。しかし、男女別に見ると、女性では同リスクの有意な上昇が示された一方(aHR 11.37、95%CI 2.74~47.16)、男性では有意差がなかった(同3.24、0.81~12.92)。また、年齢層別に見ると30~39歳と40歳以上では同リスクが上昇していた(30~39歳:aHR 12.17、95%CI 1.81~81.97、40歳以上:同4.08、1.11~15.06)。
Wong氏らは「対照群と比べ多汗症群では、全ての原因による受診率が有意に高かった(1,000人・年当たり38 vs. 160、P<0.001)。これは、2型糖尿病を早期に発見できる機会があることを示している」とし、「多汗症患者の糖尿病を早期発見するため、血糖値をモニタリングし、症状を評価すべき」と提言している。
(栗原裕美)