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被災地の病院は医療機能の自己評価を
DMAT「司令塔」の提案【南海トラフ災害医療・上】

 東日本大震災から7年がたつ今、医療関係者の間で南海トラフ巨大地震への危機感は高まる一方だ。被災地の病院は深刻な被害を受ける恐れがあり、災害急性期の救命医療を支える災害派遣医療チーム(DMAT=ディーマット)も十分に投入できる保証はない。東日本大震災や熊本地震の際、DMAT事務局で投入の指揮調整に当たった藤沢市民病院(神奈川県)の阿南英明・救命救急センター長は、被災した病院がその機能のダメージをどう評価し、どう行動すべきかの指針づくりを提案、「助けに行きたくても、すぐに行けない可能性がある。なるべく白旗を揚げずに、できる限りの診療を続けてほしい」とメッセージを送る。

 ◇圧倒的に足りない支援力

 「一番の課題は、本当にDMATは応援に来てくれるのか、病院での籠城を余儀なくされる場合にどうするか、ということだ」。2月3日、横浜市で開催された日本集団災害医学会の南海トラフ地震に関するシンポジウム。宮崎県の関係者は災害医療対策の現状を報告し、危機感をあらわにした。

阿南英明・藤沢市民病院救命救急センター長
 南海トラフ地震は、東海、東南海、南海の三つの震源域が連動した最悪の場合、内閣府が想定する最大の死者が約32万人、負傷者が約62万人。宮崎県も最大死者が約3万5000人で負傷者も2万人を大きく上回ると独自に試算する。シンポジウムの6日後、政府の地震調査委員会が今後30年以内の発生確率を、これまでの「70%程度」から「7080%」に引き上げ、関係者の危機感は一段と強まる。

 被災地にいち早く駆けつけるDMATは、1995年の阪神大震災を教訓に創設された。普段は病院で働く医師や看護師が4~5人で機動的なチームを組み、研修を受けて、各都道府県知事の下、出動に備える。東日本大震災では385チーム、熊本地震ではそれを上回る466チームが被災地入りし、自衛隊機やドクターヘリで重傷患者を被災地の外にある病院の集中治療室(ICU)に運ぶ活動にも携わった。

日本集団災害医学会の南海トラフ地震に関するシンポジウム=2月3日、横浜市
 昨年4月時点で、全国の登録チーム数は1571チーム。南海トラフ地震では急性期(1チームの活動はおおむね48~72時間)を中心に交代制で被災地入りすることが想定され、DMAT全体としては1週間を超える活動も予想される。だが、阿南氏は「DMATの数も、自衛隊機やドクターヘリの数も、被災地外の病院ICUの患者収容力も、圧倒的に足りない。災害急性期医療の基本指針に基づく従来のような対応だけでは、とても闘えない」と言い切る。

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