能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市などでは、依然としてほぼ全域で断水が続いている。自衛隊による入浴支援が行われているが、着の身着のままで避難した被災者の多くは風呂に入ることもままならず、「せめて下着を替えたい」と切実な声が出ている。
 帰省していた息子と共に避難所に身を寄せる穴水町の女性(72)は「着の身着のまま逃げてきたので下着が欲しい」と訴える。輪島市内のスーパーで下着を買い求めた女性(67)も「家がぺしゃんこで何も取り出せなかった。お風呂にも入れないし、せめて下着くらいは替えたい」と話した。
 珠洲市の自宅が倒壊し避難所にいる永田繁則さん(93)は「着替えの洗濯ができない。たまっていく一方だ」と肩を落とす。
 熊本地震の教訓などを伝承する施設「熊本地震震災ミュージアムKIOKU」で防災士を務める市村孝広さん(33)は、地震発生2日後から珠洲市内の避難所でスタッフとして支援に当たっている。地震発生直後は食料や飲料など「生き延びるための物資」が必要とされるが、1週間が経過すると下着や歯ブラシなど日用品の需要が高まると説明する。
 市村さんは「自分たちのことも考えるフェーズになってきた」と話す。自衛隊などに下着が足りないと要請しているが、「届く予定は全くない」と嘆く。
 石川県の災害対策本部会議でも8日、オンラインで参加した七尾市の茶谷義隆市長が「要望物資に変化も出ている。洗濯できないため下着の要望が強い。避難所の臭いが強く、除菌・消臭剤も要望したい」と訴えた。 (C)時事通信社