乳がんは日本の女性におけるがんで最も罹患者数が多く、欧米に比べて閉経前乳がんの割合が高いが、閉経前のホルモン受容体(HR)陽性/HER2陰性の進行・転移性乳がんに対する治療選択肢は限られている。国立がん研究センター中央病院(NCCH)などの研究グループは、HR陽性/HER2陰性の進行・転移性乳がんの女性患者を対象に、パルボシクリブ+タモキシフェン併用療法の有効性と安全性を検証する第Ⅲ相国際共同医師主導試験PATHWAYを実施。無増悪生存(PFS)の有意な延長が確認されたとの結果を受け、パルボシクリブの製造販売元であるファイザーが同薬の添付文書を改訂したと同社の公式サイトで発表した。(関連記事「閉経前乳がん、併用療法に新たな選択肢」)

タモキシフェン+プラセボと比較

 パルボシクリブは、細胞増殖を制御するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6を阻害する経口分子標的薬で、細胞周期の進行を停止させて腫瘍の増殖を抑制する。日本ではHR陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんを適応として2017年9月に承認された。ただし、閉経後乳がんに使用されるホルモン療法薬であるレトロゾールまたはフルベストラントとの併用療法の成績に基づいており、閉経の有無を問わず使用されるタモキシフェンと併用した場合の有効性および安全性は確立されていなかった。

 こうした背景の下、NCCHの主導によりアジア地域23施設(日本12施設、韓国6施設、台湾3施設、シンガポール2施設)でHR陽性/HER2陰性の進行・転移性乳がんの女性患者184例を対象にPATHWAYが行われた。NCCHは昨年(2023年)2月に、タモキシフェン+プラセボ群と比べ、パルボシクリブ+タモキシフェン併用群で主要評価項目としたPFSの有意な延長を確認したとの結果を公表していた。

日本主導による国際共同試験の成功例

 この結果に基づき、ファイザーは医薬品医療機器総合機構(PMDA)と添付文書の改訂相談を実施。PMDAは添付文書の改訂が適切と判断し、「17.臨床成績」の項に「17.1.3 国際共同第Ⅲ相試験」としてパルボシクリブ+タモキシフェン併用療法が新たに追加された。

 今回の添付文書改訂を受け、NCCHは「日本のアカデミアが国を越えたアジア地域での国際共同試験を主導し、閉経前HR陽性/HER2陰性の進行・転移性乳がん患者の治療選択肢拡大につなげ、アンメット・メディカルニーズを満たした成功例だ」と評価。「PATHWAY試験のノウハウを活用し、国内外における新たな治療薬、治療法の提供につなげたい」と展望した。

服部美咲