能登半島地震の被災地では、慣れない長期間の避難生活を強いられ、体調や持病を悪化させる高齢者が相次いでいる。災害関連死を防ごうと、防災ヘリで搬送された人を病院などへ振り分ける拠点が金沢市内に設置され、医師らが活動を始めている。
 拠点は「広域搬送拠点臨時医療施設」(SCU)と呼ばれ、県の一時避難所となっているいしかわ総合スポーツセンター、県産業展示館もある県西部緑地公園の駐車場に設けられた。大型テント2カ所に診療所と救護所があり、災害派遣医療チーム(DMAT)が16日から、医師2人、看護師4人、事務スタッフ4人の計10人で対応に当たっている。
 避難者らが体調を崩した場合、これまでは市内の災害拠点病院が一元的に受け入れ、入院が必要か否かなどを見極めてきた。だが、避難所での感染症の広がりなどもあって拠点病院の医療従事者が疲弊、受け入れが困難な状況に陥った。
 このため、SCUは拠点病院の一部機能を代替し、搬送された高齢者らを医療機関につなぐか、高齢者施設や避難所に移送するかを判断。「(治療の優先順位を決める)『トリアージ』のような機能」(DMAT事務スタッフ西健太さん)を担うことになった。
 SCUには1日当たり数十人が、能登地方から1時間かけてヘリで搬送されている。第2陣のSCUを指揮した関西医科大総合医療センターの和田大樹医師(44)によると、「80代以上の高齢者施設や特別養護老人ホームからの依頼や搬送が目立つ」という。
 和田医師は「断水などで衛生環境が整わず、長期の避難所生活で衰弱している人もいる。これは高齢者や要介護者の災害関連死を減らすための活動だ」と強調した。 (C)時事通信社