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医師の顔が見え、うれしい 
コロナで注目-オンライン診療

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中で注目されるのが、患者が直接、医療機関に足を運ばなくてもよいオンライン診療だ。6月上旬、日本遠隔医療学会が主催した公開研究会で、「医師の顔が見えてうれしい」などといった患者の声とともに、従来の外来・入院・在宅に加えた「第4の医療形態」になり得るとの強い期待が報告された。

期待がかかるオンライン診療=外房こどもクリニック提供

期待がかかるオンライン診療=外房こどもクリニック提供

 ◇安全性の実績を基に

 日本医師会の今村聡副会長は、過去に受診歴がなくても電話を含め遠隔診療を認めたのは地域医療の崩壊を避けるための「特例中の特例」と指摘した。その上で、「初診からのオンライン診療の安全性はどうなのか。エビデンス(医学的証拠)に基づいて進めていく必要がある」と語った。

 ◇高齢者施設で遠隔診療を

 東京医科大学渡航者医療センターの増山茂兼任教授は欧州における新型コロナウイルスの状況を紹介。「感染の44%が高齢者施設で起きた。では、患者が亡くなった場所はどこか。やはり高齢者施設が多く、フランスで50・8%、アイルランドで50・2%、英国やスペインにいたっては3分の2以上が高齢者施設関係だ」と話した。

 増山教授が望むのは、遠隔画像モニターとロボットを組み合わせて、どの医療施設でも患者の状態を見守ることだ。同時に「在宅の患者など地域の見守りシステムをオンライン診療とどう結び付けるかが大事だ」と強調した。

 ◇適していない症状も

 日本プライマリ・ケア連合学会の副理事長で多摩ファミリークリニックの大橋博樹院長は「プライマリ・ケアの現場では、オンラインは十分に普及しているとは言えない」としつつ、「オンライン診療はそもそも対面診療と対比するものではない。外来・入院・在宅に加わる『第4の形態』になり得るものと確信している」と語った。一方で、同学会は外房こどもクリニックの黒木春郎理事長らの協力を得て、プライマリ・ケアにおけるオンライン診療ガイドを作成。腹痛や血尿、血便、かっ血、呼吸困難などの症状は適していないとし、慎重な対応を求めた。

 ◇涙ぐむ患者

 山下診療所の山下巌理事長はこんなエピソードを紹介した。「息苦しい。胸が痛い。家族にうつさないか。通勤してもよいか」。オンライン診療の初診でコロナ感染を疑う人からの相談だ。診察を終えた後、ほっとしたのか、涙ぐんでいたケースもあったという。

 「遠隔診療でも患者の顔を見ることで症状が把握しやすい。患者の側にも、医師が顔を見せて安心感を与えることができる」と指摘し、軽症か重症かのトリアージ(識別)が保健所への相談殺到を防ぐ手段になると評価した。ただ、診療報酬の現状については疑問も呈した。

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