英・St. George's, University of LondonのSimon B. Drysdale氏らは、RSウイルス(RSV)感染による下気道疾患の予防薬として昨年(2023年)米食品医薬品局(FDA)の承認を得たモノクローナル抗体nirsevimabの第Ⅲb相非盲検ランダム化比較試験HARMONIEを実施。パリビズマブの適応外となる生後12カ月以下の健康な乳児において、nirsevimab単回筋肉内注射がRSV関連下気道感染症による入院および重症化を予防することが示されたとN Engl J Med2023; 389: 2425-2435)に発表した。

単回の筋肉内注射で83.2%に予防効果

 全体の85.2%が在胎37週以上の正期産児で、nirsevimab群の23.4%と対照群の23.9%が生後28日以下の新生児だった。

 解析の結果、主要評価項目としたRSV感染流行期におけるRSV関連下気道感染症による入院は、nirsevimab群の11例(0.3%)と対照群の60例(1.5%)に発生。「1-発生率比(%)」として算出したnirsevimabの有効性(予防効果)は83.2%(95%CI 67.8~92.0%、P<0.001)だった。

 副次評価項目とした最重症RSV関連下気道感染症(酸素飽和度90%未満で酸素投与を要するRSV関連下気道感染症による入院)は、nirsevimab群の5例(0.1%)と対照群の19例(0.5%)に発生し、nirsevimabの有効性は75.7%(95%CI 32.8~92.9%、P=0.004)と算出された。

英仏独3カ国で同等の結果、安全性は良好

 国別に見たRSV関連下気道感染症による入院に対するnirsevimabの有効性は、フランスで89.6%(調整後95%CI 58.8~98.7%、多重性調整後P<0.001)、英国で83.4%(同34.3~97.6%、P=0.003)、ドイツで74.2%(同27.9~92.5%、P=0.006)とほぼ同等で、nirsevimabのベネフィットは診療環境が異なっても維持されることが示唆された。

 有害事象の大部分はグレード1または2で、なんらかの有害事象(nirsevimab群36.8% vs. 対照群33.0%)、グレード3有害事象(同1.2% vs. 1.1%)の発現率は両群で同等だった。治療関連有害事象はnirsevimab群の2.1%に発現した。

 以上の結果を踏まえ、Drysdale氏らは「nirsevimabは健康な正期産児および早産児のRSV関連下気道感染症による入院および最重症RSV関連下気道感染症を予防し、安全性プロファイルが良好だった」と結論している。今回の解析では大部分の乳児の追跡期間が約3カ月と短かったが、HARMONIE試験は追跡期間をランダム化後12カ月以上として継続中であり、追加データの収集が見込まれている。

太田敦子