ブラジル・Universidade Federal do Rio Grande do SulのChristian Kieling氏らは、小児期から成人初期における精神障害の世界的な有病率を推定するため、世界疾病負担研究(Global Burden of Disease:GBD)研究のデータを用いて、世界の5〜24歳の25億人超を対象に横断研究を実施。その結果、世界の小児と若者の9人に1人が精神障害を有することが推定されたとJAMA Psychiatry2024年1月31日オンライン版)に報告した。

精神障害と物質依存の有病率および障害生活年数を算出

 精神障害は、世界における疾病関連負担の主要な原因となっており、若年者で特に発症しやすい。Kieling氏らは、全世界の5~24歳の25億1,600万例を対象に、精神障害と物質使用障害(SUD)の全世界的な有病率と障害生活年数(YLD)を推定する横断研究を実施した。

 精神障害とSUDは、GBD2019のデータを用いて、年齢(5~9歳、10~14歳、15~19歳、20~24歳)および性で層別化し解析した。データは2018年までに収集、解析は2022年4月〜23年9月に実施した。

 精神障害には不安障害、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム症、双極性障害、行為障害、抑うつ障害、摂食障害知的障害統合失調症、その他の精神障害が含まれた。SUDはGBD階層では精神障害とは別に分類されているが、国際疾病分類(ICD)に沿った精神障害の包括的な推定のため、アルコールおよび薬物依存症を含めて検討した。

 有病率は、システマチックレビューや政府および国際機関の公式サイトの検索、公開報告書などから得られた情報に基づき、DisMod-MR 2.1を用いてバイアスを調整し推定した。YLDは、各疾患に付随する障害や後遺症の度合いを明確にして後遺症の有病率を推定後、各後遺症について重み付けを行い算出した。

15〜19歳の精神障害率が高く、特に不安障害が多い

 解析の結果、2019年に全世界の5〜24歳の25億1,600万例中2億9,300万例が1つ以上の精神障害を、3,100万例がSUDを有していた。

 平均有病率は精神障害が11.63%、SUDが1.22%だった。疾患別の有病率が最も高かったのは不安障害〔8,400万例(3.35%)〕で、最も低かったのは統合失調症〔200万例(0.08%)〕だった。

 年齢層別に見ると、精神障害の有病率は5〜9歳で6.80%〔95%不確実性区間(UI)5.58〜8.03%〕、10〜14歳で12.40%(同10.62〜14.59%)、15〜19歳で13.96%(同12.36〜15.78%)、20〜24歳で13.63%(同11.90〜15.53%)だった。

 全体として、わずかだが小児期の精神障害の有病率は男性優位、青年期では女性優位だった。男性は自閉スペクトラム症、ADHD、行為障害の有病率が高かったのに対し、女性は不安障害、摂食障害、気分障害の有病率が高く、この傾向は年齢に関係なく同様だった。知的障害統合失調症の男女比はほぼ同等だった。

 精神障害は5〜24歳のYLDの主な原因で、1億5,359万YLD中の3,114万YLD(20.27%)を占めた。SUDは430万YLD(2.80%)を占めた。生涯を通じて、精神障害に起因するYLDの24.85%が5〜24歳の間に発生していた。

 以上を踏まえ、Kieling氏らは「世界全体で5〜24歳の11.6%が、診断可能な精神障害を抱えていることが示された。精神障害およびSUDの早期発症による生涯負担を考慮すると、より効果的な予防・介入のためには、年齢を細分化したデータが不可欠である」と結論している。

(今手麻衣)