本日(2月22日)ノボ ノルディスクファーマは、週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬セマグルチド(抗肥満薬としての商品名ウゴービ皮下注)を発売したのを機に、プレスセミナーを開催した。ウゴービ皮下注は昨年(2023年)11月22日付で保険収載されており、承認から11カ月を経ての発売となる(関連記事「承認から11カ月、ついに抗肥満薬ウゴービ発売」)。同社はプレスセミナーで、同薬が果たす社会的意義、臨床的意義について説明。内臓脂肪面積(VFA)の減少にも効果があるとのデータも示した。

肥満症の薬剤治療という選択肢で患者のQOL向上へ

 ノボ ノルディスクファーマ代表取締役社長のKasper Bødker Mejlvang氏は「肥満症によってQOLの低下、社会的なコストの増加を引き起こす多くの心血管疾患や深刻な慢性疾患のリスクが高まるが、薬物治療によって改善する可能性がある」とし、「肥満に対するスティグマとも呼ぶべき文化的バイアスがある。肥満症は疾患であり、肥満症患者のQOL向上に寄与したい」と展望した。

投与68週後の内臓脂肪面積の変化率は2.4mgで-40%

 同社取締役副社長/開発本部本部長の杉井寛氏は「人体には恒常性があり、体重が減少すると元に戻そうとする科学的機構(代謝適応)が働き、体重増加につながる。つまり、患者の意思だけで減量を維持するのは難しい」と指摘。そのため、治療薬による介入が新たな治療選択肢となるとの見解を示した。

 ウゴービは動物実験において脳内のGLP-1受容体を介し、恒常的調節機構および快楽的調節機構に作用し、エネルギー摂取および食欲を抑制することが示されており、空腹感の抑制効果が示唆されている。

 同氏は、肥満症の東アジア人(日本人患者360例、韓国人患者41例)を対象に、ウゴービの有効性および安全性を検討した第Ⅲ相臨床試験Semaglutide Treatment Effect in People with obesity(STEP)6の結果を提示。投与68週後の体重変化率(推定値)は、2.4mg群で13.2%、1.7mg群で9.6%だった。同氏は「特徴として標準誤差が小さいことが挙げられる。これは、個人差が小さいことを示唆している」と指摘した。

 また、投与68週後のVFAの変化率は、2.4mg群で-40.05%、1.7mg群で-22.16%だった。同薬においてVFA減少の有効性が示されたのは世界初となる。

適正使用で必要な人に必要な薬を

 最後に、同社肥満症事業本部本部長の清水真理子氏は「深刻な慢性疾患である肥満症の患者に、薬物治療という新しいオプションを提供できる。必要な患者に必要な薬を届けるため、適正使用を促進していきたい」と述べ、「最適使用推進ガイドラインに沿った医療機関で適切に処方していただけるよう、医療機関や医薬品卸売販売業者に向けて情報提供を行っていく」と展望した。

栗原裕美