人の胚性幹細胞(ES細胞)から疑似的な胚盤胞を作製し、実験容器内で培養した子宮内膜モデルに「着床」させて詳細に観察できたと、東北大と熊本大、東京大、東京医科歯科大の研究チームが23日付の米科学誌サイエンス・アドバンシズ電子版に発表した。生殖補助医療(不妊治療)の体外受精や顕微授精では着床に失敗する例が多く、東北大大学院医学系研究科の柴田峻助教は「メカニズムを解明して予防するのに役立つ」と話している。
 胚盤胞は受精卵が分裂して成長した状態で、内側の細胞群から胎児、外側の細胞群から胎盤が生じる。精子と卵子を受精させるのではなく、ES細胞や人工多能性幹細胞(iPS細胞)から疑似的な胚盤胞を直接誘導したり、女性患者から病気で摘出された子宮内膜を培養したりする技術は近年海外で開発され、着床を再現する実験も行われている。
 しかし、疑似胚盤胞が子宮内膜に接着した後、胎盤になる細胞が子宮内膜の上皮細胞を破って浸潤し、間質細胞に融合する現象まで観察できたのは世界初だという。子宮内膜を実験容器内で血管内皮細胞や間質細胞と一緒に培養する際、コラーゲンを適切な割合で加えて胚盤胞が接着する側の細胞を表面に露出させる工夫をして、着床の過程を詳しく観察できた。
 この子宮内膜モデルに不妊治療で余った本物の胚盤胞を着床させる実験も行い、融合する現象が起きることを確認した。ただ、本物の胚盤胞は入手が困難な上、大量に実験に使うのは倫理面で問題があるため、模擬する実験方法が必要となる。 (C)時事通信社