治療・予防

母子の命に関わる常位胎盤早期剥離
普段と違う張りや痛み、出血に注意(昭和大学病院産婦人科 関沢明彦教授)

 常位胎盤早期剥離は、正常な位置にある胎盤が、出産前に子宮から剥がれてしまう病気だ。妊娠中に最も注意を要する病気の一つで、胎児の命にも関わるので、一刻も早い処置が必要になる。昭和大学病院(東京都品川区)産婦人科の関沢明彦教授は「常位胎盤早期剥離という病気についてしっかりと知っておき、症状を見逃さないことが必要です」と強調する。

症状は切迫早産や出産の兆候と似ていて区別しづらい

 ▽胎児の死亡率は10倍

 胎盤は胎児に栄養や酸素を送る臓器で、通常は出産後に子宮から剥がれて排出される(後産)。ところが、常位胎盤早期剥離では、出産前に胎盤の一部が子宮から剥がれてしまい、胎児への酸素供給が減少してしまう。1000件の分娩(ぶんべん)に約6件の割合で発症し、胎児の死亡率は通常分娩の約10倍にも及ぶ。関沢教授は「腹部の張りや痛み、性器出血、胎動の減少などの症状がありますが、切迫早産や出産の兆候とも似ているので区別がつかないこともあります」と説明。症状には個人差があるが、急激に悪化するケースが少なくない。

 胎盤が剥がれた部位では出血して血液がたまるため(血腫)、超音波で子宮と胎盤の間に血腫がないか、胎児心拍数モニタリングで低酸素の兆候がないかを検査する。「胎児が低酸素に陥ると、出生後に脳性まひなどの障害が残ることも少なくないため、常位胎盤早期剥離と診断されたら緊急帝王切開術を行います」と関沢教授。

 ▽異常あればためらわず

 常位胎盤早期剥離の原因はよく分かっていない。妊娠高血圧症候群や、常位胎盤早期剥離の発症経験があるとリスクが高まり、腹部への衝撃や喫煙などもリスクになり得る。

 さらに関沢教授は、母体側への影響についても懸念する。「胎盤が剥がれた部位では、血液凝固因子が活性化されて血液を固めます。この物質は、母体の血管にも流入し全身の細い血管に微小な血の塊(血栓)を作るため、血液凝固因子が大量に消費されて不足し、今度は出血が止まりにくくなります」。分娩時に大量出血を起こし、出血性ショックから母体の命を脅かすこともあるという。

 胎盤は、一度剥がれてしまうと元には戻らない。関沢教授は「腹部の持続的な張りや痛み、出血が普段と違うと感じたら、夜中でも迷わずにかかりつけの医療機関に連絡してください」と強く訴える。日頃から、緊急時にはどうすればいいかを主治医とよく相談し、行政の緊急相談窓口なども調べておくとよい。常位胎盤早期剥離は予防が難しい。病気をよく理解し、早期発見に努めたい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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