新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、各領域でオンラインによる医療提供が急速に拡大した。中でも診断において視覚的な情報が重視される皮膚科ではテレダーマトロジー(皮膚科におけるオンライン医療)の前進に対する期待が高まっているが、一方でその安全性や有効性は明確になっていない。米・Mayo ClinicのNessa Aghazadeh Mohandesi氏らは、皮膚科で実施された約1万3,000件のオンライン診療について要素別に有用性を検証。その結果、オンライン診療全体のうち約30%が1回で完結し、使用したモダリティはリアルタイムのビデオ会議が多かったとDigit Health(2024年2月25日オンライン)に報告した。
オンライン受診は女性が60%以上、新規患者は15%未満
テレダーマトロジーについては、これまでに医療費の削減や遠隔地における医療アクセス改善といったメリットが報告されており、米国皮膚科学会(AAD)などは治療オプションとして支持している(AAD. Position statement on teledermatology)。しかし、オンライン診療に適する患者像は確立されておらず、各アプローチ法の有効性や適切性についても研究段階である。
この状況を踏まえ、Aghazadeh Mohandesi氏らは最適なアプローチ法の特定を目的に、Mayo Clinicの全系列病院(ミネソタ州ロチェスター、フロリダ州ジャクソンビル、アリゾナ州スコッツデール、ミネソタ州およびウィスコンシン州のメイヨー・ヘルス・システム)で行われたオンライン診療を後ろ向きに調査した。方法は、電子カルテ記録から2020年1月~21年1月に皮膚科の患者6,478人に対して行われたオンライン診療1万3,181件を抽出、オンライン診療に用いた3つのモダリティ〔非リアルタイム/ストア・アンド・フォワード方式(データを記録・蓄積して転送する方法)、リアルタイム/ビデオ会議、リアルタイム/オーディオ通話〕について、年齢・性別・新規/既存などの患者背景を分類し、フォローアップの回数および対面診療の要否から有効性を検証した。解析は、変数間の比較にはχ2検定またはFisherの正確確率検定、連続変数の比較には分散分析法またはKruskal-Wallis検定を用いた。
その結果、オンライン診療全体で受診患者の平均年齢は34.1歳、女性が60.2%(3,896人)を占めていた。使用されたモダリティはビデオ会議が40.0%と最も多く、次いでオーディオ通話が33.0%、ストア・アンド・フォワード方式が27.0%であった。新規患者の割合は14.3%(1,884人)と少なく、同氏らはこの背景に関し「患者や医療従事者のオンライン診療に対する不慣れや生検といった臨床的な処置を必要としたなど、初診時には不適切だった可能性がある」と推考している。
1回完結と対面不要のケースではビデオ会議が最も多い
診療回数に着目すると、全体のうち29.9%(3,944回)でフォローアップが必要なく、1回の診療で完結していた。再診など複数回の診療が必要であった患者との比較においては、男女差はなく、平均年齢は1回が37.4歳、複数回が32.6歳であった(P<0.001)。モダリティに関して、1回ではビデオ会議(58.0%)が半数以上を占めたが、複数回ではオーディオ通話(37.5%)が最も多く、ビデオ会議(32.2%)は2番目となっている(いずれもP<0.001)。
最終的に対面診療が必要になった患者は26.2%(1,693人)で、必要がなかった患者と比較して男女差は見られなかったものの、平均年齢は対面が必要になった患者では38.8歳、必要がなかった患者では32.6歳と有意差があった(P<0.001)。モダリティについては、対面診療が必要になった患者ではストア・アンド・フォワード方式(35.3%)が最も多かったが、1回で完結した患者では70.1%がビデオ会議を選んでいた。
患者の転帰や満足度に関する追加調査が望まれる
受診回数や対面診療の要否の点で男女差は見られず、全体の約30%が1回で完結していたという結果を受け、Aghazadeh Mohandesi氏らは「皮膚科医療においてオンライン診療が効果的な手段となりえることを示唆する」と結論している。さらに、1回で完結したケースにおいて最も多く用いられていたビデオ会議は、他のアプローチ法より包括的に診療できる可能性があると評価した。
研究の限界として、単一センターの患者集団が対象のため一般化が制限されること、また使用したモダリティが2021年当時の技術によるものであることや患者傾向も現在とは異なることが挙げられている。同氏らは「最適なテレダーマトロジーを行うためには、オンライン診療の長所や限界、および患者の要望についてのさらなる知見の集積が必要である。今後は各アプローチ法における転帰や患者満足度についての調査が求められる」と研究を継続する必要性を強調した。
(山路唯巴)