カナダ・Centre Hospitalier Universitaire de QuébecのMarie Plante氏らは、低リスク早期子宮頸がん患者700例を対象に、広汎子宮全摘術と単純子宮全摘術を比較する第Ⅲ相国際ランダム化非劣性試験SHAPEを実施。その結果、術後3年以内の骨盤領域におけるがんの再発(3年骨盤内再発)に関して単純子宮全摘術の広汎子宮全摘術に対する非劣性が示され、泌尿器系合併症が少なかったとN Engl J Med(2024; 390: 819-829)に発表した。
3年骨盤内再発率、単純2.52% vs. 広汎2.17%
早期子宮頸がんに対しては、広汎子宮全摘術が標準治療とされている。しかし、低リスク早期子宮頸がん患者では、子宮傍組織浸潤の発生率が低いことが後ろ向き研究で示されており、低リスク例への広汎子宮全摘術には疑問が呈されている。
そこでPlante氏らは、12カ国130施設で国際産婦人科連合(FIGO)2009ステージ分類ⅠA2期またはⅠB1期、腫瘍径2cm以下、間質浸潤10mm未満、術前画像診断でリンパ節転移を認めない低リスク早期子宮頸がん患者700例を登録。単純子宮全摘術を行う単純群(350例)と広汎子宮全摘術を行う広汎群(350例)に1:1でランダムに割り付けた。主要評価項目は3年骨盤内再発率とし、広汎子宮全摘術に対する単純子宮全摘術の非劣性を検証。非劣性マージンは4%ポイントとした。
主な背景は、FIGO分類ⅠB1期が91.7%、扁平上皮がんが61.7%、グレード1または2が59.3%、白人が75%、50歳以下が74%などだった。広汎群と比べ、単純群では開腹手術が少なく(28.8% vs. 16.9%)、腹腔鏡手術が多かった(44.2% vs. 55.6%)。
解析の結果、中央値で4.6年間の追跡期間における骨盤内再発は広汎群の10例(2.9%)に対し、単純群では同4.5年間に11例(3.1%)と差はなかった(ハザード比1.12、95%CI 0.47~2.67)。3年骨盤内再発率は、広汎群の2.17%に対し単純群では2.52%で(絶対群間差0.35%ポイント、90%CI -1.62~2.32%ポイント)、群間差の90%CI上限値が非劣性マージンを下回ったため、広汎子宮全摘術に対する単純子宮全摘術の非劣性が示された。
単純全摘で尿失禁、尿閉など泌尿器系合併症が減少
安全性の評価では、術後4週間以内のなんらかの手術関連有害事象の発生率は広汎群と比べ、単純群で有意に低かった(50.6% vs. 42.6%、P=0.04)。項目別に見ても、尿失禁の術後4週間以内(5.5% vs. 2.4%、P=0.048)および4週間以降(11.0% vs. 4.7%、P=0.003)の発生率、尿閉の術後4週間以内(11.0% vs. 0.6%、P<0.001)および4週間以降(9.9% vs. 0.6%、P<0.001)の発生率はいずれも単純群で有意に低かった。
また、欧州がん研究治療機構(EORTC)の尺度で評価したQOLおよび性機能は、広汎群と比べて単純群で全般的に良好だった。
以上の結果から、Plante氏らは「低リスク早期子宮頸がん患者の3年骨盤内再発に関し、単純子宮全摘術の広汎子宮全摘術に対する非劣性が示され、泌尿器系合併症が少なかった」と結論。ただし「今回の単純群の解析は追跡期間中央値4.5年時点のものであり、これ以降に再発する可能性もある。また術式はランダム化後に担当医が選択しており、低リスク子宮頸がん患者における腹腔鏡手術の安全性を評価できるデザインではなかった」と付言している。
(太田敦子)