英・University of LeicesterのSetor K. Kunutsor氏らは、新規の糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬)によるHbA1c低下と大血管および細小血管転帰との関連を包括的に検討するため、これらの薬剤のランダム化プラセボ対照心血管アウトカム試験(CVOT)のシステマチックレビューとメタ解析を実施。結果をDiabetes Obes Metab (2024年2月20日オンライン版)に報告した。
20件・約17万例のデータを組み入れ
新規糖尿病治療薬の心血管に対する便益は、これまで主要心血管イベント(MACE)を中心に検討されており、その他の大血管転帰や細小血管転帰についての評価は限定的だった。
今回の研究では、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Libraryに2023年9月までに公開されたRCTで、成人2型糖尿病患者を対象に従来の糖尿病ケアへのSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬を追加する群とプラセボ群を比較した試験を抽出。各試験のハザード比(HR)と95%CIをプールして、MACEおよびその他の大血管/細小血管転帰に対する3剤の便益を評価し、メタ回帰分析によりそれらの転帰とHbA1c低下との関連を評価した。
計20件のCVOT(SGLT2阻害薬6件、GLP-1受容体作動薬9件、DPP-4阻害薬5件)から成人の2型糖尿病患者16万9,513例のデータを組み入れた。いずれの試験も国際多施設試験だった。
SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は大血管/細小血管リスクを一貫して低減
複合心血管(CV)イベント(3ポイントMACE:CV死、非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞)のプラセボに対するHRは、SGLT2阻害薬が0.88(95%CI 0.82~0.94)、GLP-1受容体作動薬が0.85(同0.79~0.92)で有意なリスク低下が認められた。一方、DPP-4阻害薬では便益は見られなかった(HR 1.00、95%CI 0.94~1.06)。
SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は、特に複数の大血管症と細小血管症(特に腎イベント)のリスクを一貫して低減させた。一方、DPP-4阻害薬では大血管症に対する便益を認めず、細小血管症に関してはDPP-4阻害薬との関連を検討した試験が少ないため(網膜症2件、その他は1件のみ)、厳密な評価はできなかった。
HbA1c低下率を超えた血管便益
HbA1c低下率と3ポイントMACEリスクとの間には負の線形相関が見られたが、統計学的に有意ではなく(HbA1c 1%低下当たりの推定リスク 0.84、95%CI 0.67~1.06、P=0.14、R2=14.2%)、MACEの要素のうち非致死的脳卒中の減少によることが示唆された(R2=100.0%、P=0.094)。
HbA1c低下率と、その他の複数の血管転帰との間にも負の線形相関が見られたが、統計学的に有意ではなかった。このことから、Kunutsor氏らは「最適な血糖管理は血管リスクの軽減に部分的に関与しているようだが、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬による心血管および腎ベネフィットには、血糖管理だけにとどまらない多元的な機序が示唆される」と指摘している。
その上で、同氏らは「SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者の大血管および細小血管イベントのリスクを一貫して低減させた」と結論。「両薬剤は、2型糖尿病の血糖管理と血管転帰の双方を考慮した治療において中心的な役割を担う」との展望を示した。
(小路浩史)