脂漏性皮膚炎と変形性関節症(OA)は、メタボリックシンドロームや全身性炎症といった共通の病因を持っている。トルコ・Giresun University Faculty of MedicineのSevgi Kulakli氏らは、大腿骨遠位部軟骨厚(FCT)が脂漏性皮膚炎患者におけるOAの早期マーカーとして有用な可能性があるとMedicine2024; 103: e37217)に報告した。

脂漏性皮膚炎の有無および重症度で比較

 Kulakli氏らは、18歳以上の脂漏性皮膚炎患者60例(平均年齢34.07±12.56歳、男性41例、女性19例、平均罹病期間5.26±6.7年)と年齢・性をマッチングした対照60例を対象に、脂漏性皮膚炎とOAの関連について検討した。超音波検査で左右内側顆、左右外側顆、左右顆間のFCTを測定し両群を比較。なお妊婦、内分泌疾患、腎疾患、肝疾患、リウマチ性疾患、悪性腫瘍がある者、骨代謝に影響を及ぼす薬物(ステロイド、ヘパリン、抗痙攣薬など)の使用者、膝に外傷や手術歴がある者は除外した。

 脂漏性皮膚炎の重症度は、脂漏性皮膚炎面積・重症度指数スコア〔SDASI:紅斑、鱗屑、痒みを0:なし、1:軽度、2:中等度、3:重度でスコア化し、さらに部位ごとの係数(頭皮:0.1、生え際:0.4、鼻唇部:0.1、眉:0.1、耳後:0.1、耳:0.1、胸部:0.2、背中:0.2、頬および顎0.1)を乗じて算出〕に基づき判定、SDASIスコアが0〜4.4を軽症、4.5〜8.5を中等症、8.6〜12.6を重症に分類。遠位部FCT値は、滑膜腔から軟骨および軟骨から骨界面の明瞭な線状高エコー像間の距離とした。

 脂漏性皮膚炎患者群で最も多かった病変部位は、頭皮および顔面(48.3%)で、重症度の内訳は軽度42例(70%)、中等度18例(30%)だった。

 両群で身長、体重、BMI、喫煙状況、運動習慣などに差はなく、朝のこわばり、動悸、膝の弛緩についても有意差は認められなかったが、膝痛は脂漏性皮膚炎群で有意に多かった(P=0.032)。

FCT値とSDASIスコアに有意な相関

 超音波検査の結果、FCT値は全ての測定点において脂漏性皮膚炎群で有意に厚かった(全てP<0.05)。脂漏性皮膚炎の重症度別に見ると、軽症例よりも中等度例で有意に厚かった。

 また、脂漏性皮膚炎の重症度と左右内側顆、右外側顆、左右顆間のFCT値との間には強い正の相関が、左外側顆との間には中程度の正の相関が認められた。さらに、線形回帰分析でSDASIスコアとFCT値の関連を調べたところ、SDASIスコアと右内側顆(R2=0.498)、右外側顆(R2=0.519)、右顆間(R2=0.590)、左内側顆(R2=0.334)、左外側顆(R2=0.318)、左顆間(R2=0.423、全てP<0.001)の間に有意な相関が認められた。

 以上から、Kulakli氏らは「OAは、特に膝のように体重負荷がかかる部位で軟骨の減少と軟骨下骨の変化を来す慢性疾患だが、初期段階では軟骨の浮腫および腫脹を主徴とする。近年、①脂漏性皮膚炎およびOAの患者において代謝性炎症、すなわちインターロイキン(IL)-1β、IL-6、IL-17、腫瘍壊死因子(TNF)ɑなどの炎症性サイトカインが共通して病因に寄与する、②脂漏性皮膚炎の病因においてアンドロゲンが重要な役割を担っており、アンドロゲン亢進症を特徴とする多囊胞性卵巣症候群(PCOS)が併発している脂漏性皮膚炎患者では早期OAが52.5%に見られたーといった知見が報告されている。われわれの研究から、脂漏性皮膚炎患者におけるFCTの増加は、OAの早期マーカーとなりうることが示された。しかしながら、特に高齢の脂漏性皮膚炎患者での検討、性ホルモンプロファイリングの評価など、さらなる研究が必要である」と述べている。

編集部