抗精神病薬誘発のアカシジア(AIA)は、投与例の14~35%で発生し、統合失調症患者の自殺増加やアドヒアランス低下と関連している。抗精神病薬の調節だけでAIA症状が軽減できないときは、補助薬を対症療法的に投与するが、それらの薬剤の効果を比較したシステマチックレビューとメタ解析はない。フランス・Aix-Marseille UniversitéのCyril Gerolymos氏らは、AIA治療薬の効果を比較するために、二重盲検ランダム化比較試験(RCT)のシステマチックレビューとネットワークメタ解析を実施。結果を、JAMA Netw Open2024; 7: e241527)に報告した。

ランダム効果モデルによりRCT 15件をメタ解析

 Gerolymos氏らは、MEDLINE、Web of Science、Google Scholarを検索し、①アカシジアの診断基準を満たし抗精神病薬による治療中の患者で、AIA治療薬とプラセボ、またはAIA治療薬同士を比較、②登録10例以上、③試験中の追加薬物投与なし、④有効性が確立されているアカシジアスコアで評価―の組み入れ基準に合致するRCTを抽出。ランダム効果モデルを用いたペアワイズメタ解析とネットワークメタ解析を行い、治療法間の標準化平均差(SMD)を推定した。

 主要評価項目は、各試験の最終評価時に有効性が確立された指標で評価したアカシジアの重症度とし、主要評価項目に関するデータが欠落している試験は除外した。

 15件のRCT(計492例、10種の薬剤)を組み入れた。15件のうち12件はプラセボとの比較で、3件は対照群に実薬(プロプラノロール2件、ジフェンヒドラミン1件)を用いていた。

リスクベネフィットの点ではビタミンB6製剤がベスト

 AIA症状に対する効果が最も優れていたのは、高い順にミルタザピン(15mg/日を5日以上、SMD -1.20、95%CI -1.83~-0.58)、ビペリデン(6mg/日を14日以上、同-1.01、-1.69~-0.34)、ビタミンB6製剤(600~1,200mg/日を5日以上、同-0.92、-1.57~-0.26)の3剤だったが、効果と忍容性のバランスはビタミンB6製剤が最も優れていた。ミルタザピンは鎮静作用や体重増加といった副作用により忍容性が低かった。

 効果と忍容性が若干低下するものの、トラゾドン(50mg/日を5日以上、SMD -0.84、95%CI -1.54~-0.14)、ミアンセリン(15mg/日を5日以上、同-0.81、-1.44~-0.19)、プロプラノロール(20mg/日を6日以上、-0.78、-1.35~-0.22)も有効な選択肢だった。

 一方、シプロヘプタジン、クロナゼパム、ゾルミトリプタン、バルプロ酸は有意な効果を示さなかった。

 試験間の異質性は、軽度~中等度だった(I2=34.6%、95%CI 0.0~71.1%)。バイアスリスクは、15件中8件が軽度、2件が中等度、5件が高度だった。

 感度分析の結果は、シプロヘプタジンとプロプラノロール以外の薬剤で、全般的に主解析結果と一致していた。精神症状の重症度と効果量との間に関連は見られなかった。

 これらを踏まえ、Gerolymos氏らは「今回のシステマチックレビューとネットワークメタ解析の結果は、適切なAIA治療薬の選択に有用となるはずだ」と期待を寄せている。

(小路浩史)