2022年12月に改正難病法が成立した。指定難病患者に対する医療費助成の開始日は、従来の「市区町村に申請した日」から「難病が重症化した日」に前倒しされ、患者の医療費負担が軽減された。しかし、難病指定医/協力難病指定医の24%は法改正点を認知していないことが、日本ベーリンガーインゲルハイムが行った医師調査で浮き彫りとなった。
対象は最近1年間に特発性間質性肺疾患を診療した難病指定医/協力難病指定医
日本ベーリンガーインゲルハイムは、特発性間質性肺炎(指定難病85)の治療環境整備に関する知見を得るため、医師および患者を対象にインターネット調査を実施した。
医師調査の対象は、最近1年間に特発性間質性肺疾患(間質性肺炎および肺線維症を含む)を伴う患者を診療した難病指定医/協力難病指定医(有効回答200人、調査期間2023年10月19~23日)。調査項目は、①改正難病法および難病医療費助成制度の認知度、②患者への医療費助成制度の紹介状況、③改正難病法における変更事項以外の改善内容―とした。
改正難病法を聞いたり見たりしたことがある医師は4割超
調査の結果、①の改正難病法の認知度については、「内容までは把握していないが、聞いたり見たりしたことがある」(46.5%)が最も多く、次いで「内容を把握している」(29.5%)だった。一方、「今まで見たり聞いたりしたことがなかった」との回答も約4分の1(24.0%)に見られた。
2023年10月以降、医療費助成の開始日が「重症度分類を満たしていることを診断した日」(重症化時点)に変更された。これに対し、当該医師は「内容までは把握していないが、聞いたり見たりしたことがある」が4割超(43.5%)を占め、「内容を把握している」は3割超(32.5%)、「今まで見たり聞いたりしたことがなかった」が2割超(24.0%)だった。
医学の進歩により一部で指定難病は診断基準の見直しが進められている点については、「内容までは把握していないが、聞いたり見たりしたことがある」が40.5%と最も多かったが、「今まで見たり聞いたりしたことがなかった」は32.5%と他の項目より多く、「内容を把握している」は27.0%だった。
なお特発性間質性肺炎は、今年(2024年)4月に厚生労働省の診断基準および重症度分類基準が改訂され、外科的肺生検なしで診断が可能となった(関連記事「特発性間質性肺炎の診断基準改訂へ」)。
患者に難病医療費助成制度を「自分からは紹介しない」医師は1割弱
②の医療費助成制度に関する指定難病患者への情報提供については、重症度に関わらず「必ず紹介する」の26.0%をはじめ医師の9割以上(91.0%)が行っていた(図1)。その一方で、「自分からは紹介しない」が1割弱(9.0%)見られた。
図1. 医師による難病医療費助成制度に関する患者への情報提供
③の今回の改正以外に改善が望まれる項目(複数回答可)として、最も多かったのは「助成対象の条件(重症度分類)の整備」(48.0%)で、「軽症者や医療費が高額でない患者への助成」(38.0%)、「居住地(都道府県)による認定率のばらつきの解消」(35.0%)、「患者の申請書類の種類・数の削減」(31.0%)なども挙げられた(図2)。
図2. 難病医療費助成制度に対する改善ニーズ
(Medical Tribune=時事)
(2024/03/26 15:45)