化粧をしたまま運動すると、毛穴が詰まるなどして肌への負担になることが知られている。しかし、運動中に化粧が皮膚表皮にどのような影響を及ぼすかは、十分に解明されていない。米・Texas A&M University-San AntonioのEun-Jung Yoon氏らは、健康な若者43人を対象に、顔の一部にファンデーションを塗って運動してもらい、塗布した部分としていない部分の皮膚の状態を比較した。その結果、塗布した部分では運動中に油分が減り、乾燥につながる可能性があることが分かったと、J Cosmet Dermatol2024年3月6日オンライン版)に報告した。

顏の半分にファンデーションを塗布

 研究対象は、化粧品成分にアレルギーなどがない健康な大学生で、内訳は男性20人(平均年齢26.3±1.5歳)と女性23人(同23.1±1.0歳)。試験前に洗顔してもらい、額と頬の一部に油分を含まないリキッドファンデーションを塗布した。皮膚分析器でファンデーションなしの額(Tゾーン)および顎(Uゾーン)と、ファンデーションありの額(MTゾーン)および顎(MUゾーン)における皮膚の水分、弾力性、毛穴、皮脂、表皮の油分の状態を測定した後、20分間のトレッドミル歩行を行い、再びT/U/MT/UTゾーンの測定を行って、運動前後およびファンデーションの有無による皮膚の状態を比較した。

 なお、TゾーンとMTゾーンは眉の正中線からそれぞれ左右2cm、UゾーンとMUゾーンは左右の頬骨突起からそれぞれ5cm内側とした。左右どちらにファンデーションを塗布するかは、対象が選択した。

 トレッドミル歩行は時速5km程度を5分、時速6km程度を10分、時速8km程度を5分行い、最大心拍の50~70%となる運動強度に設定された。実験室の温度は20~25℃、湿度は45~55%(肌の測定時は55~65%)だった。

毛穴が詰まり油分のコントロールが難しい

 解析の結果、水分と弾力性の値はTゾーンとMTゾーンで運動後に有意に上昇した(平均水分値:Tゾーン24.5±1.3→38.5±3.5、MTゾーン18.7±0.7→40.4±4.8/弾力性の平均値:Tゾーン25.6±1.3→41.5±3.5、MTゾーン20.0±0.9→41.7±3.7、ともにP=0.000)。

 毛穴の平均サイズの値は、Tゾーンのみ有意に上昇した(41.7±2.1→47.8±2.4、P=0.006)。なお、ファンデーションを塗布しなかった部分に比べ、塗布をした部分では運動前後で毛穴の平均サイズは顕著に低下していた。

 皮脂の値についてはTゾーンで低下し、Uゾーンで上昇した(Tゾーン21.2±3.6→18.5±3.2、P=0.020、Uゾーン27.9±4.9→30.9±4.5、P=0.003)。ファンデーションを塗布したMTゾーンおよびMUゾーンでは運動後に上昇したが、塗布していないTゾーンとUゾーンに比べて運動前の値が低値であり、運動後も同様だった。(MTゾーン2.4±0.7→4.2±0.8、P=0.000、MUゾーン1.8±0.34→4.9±0.9、P=0.001)。

 表皮の油分の値はTゾーンとUゾーンで上昇したが、MTゾーンとMUゾーンでは低下していた(Tゾーン6.1±1.4→11.8±2.0、P=0.004、Uゾーン7.3±1.5→11.9±1.9、P=0.001、MTゾーン13.3±1.9→7.4±2.3、P=0.008、MUゾーン22.1±2.4→3.2±1.0、P=0.000)。

 Yoon氏らは、ファンデーションによって皮膚表皮からの水分の蒸発が部分的に抑えられた可能性に触れながら、「毛穴が塞がれて皮膚の油分を良好に保つことが難しく、乾燥につながる」と指摘。「特に肌が乾燥しやすい人は運動中の化粧を避けた方がよい」と結論している。

(編集部)