スペイン・Universitat Autònoma de BarcelonaのPatricia Pozo-Rosich氏らは、1~2種類の非特異的な経口片頭痛予防薬(OMPM)が無効であった片頭痛患者621例を対象に、抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体エレヌマブへの切り替えと非特異的OMPM継続の有効性を比較する第Ⅳ相多施設非盲検実薬対照ランダム化比較試験(RCT)APPRAISEを実施。エレヌマブに切り替えた群で、平均の月間片頭痛日数(MMD)が半減した割合が有意に多く、安全性の懸念もなかったとJAMA Neurol2024年3月25日オンライン版)に報告した。(関連記事「片頭痛薬CGRP関連抗体はこう使う」)

長引く治療でアドヒアランス低下や医療費負担が問題に

 非特異的OMPMとして用いられるβ遮断薬、カルシウム(Ca)拮抗薬、抗てんかん薬、抗うつ薬などは忍容性や有効性に乏しく、複数の薬剤を繰り返し使用する患者が多いため、アドヒアランス低下や医療費負担が問題視されている。

 Pozo-Rosich氏らは今回、OMPMからエレヌマブへの早期切り替えが片頭痛の予防に有効であるかを検討するため、2019年5月15日~21年10月1日に17カ国84施設でAPPRAISE試験を実施した。

 対象は、1~2種類のOMPM〔β遮断薬、Ca拮抗薬フルナリジン(日本では販売中止)、トピラマート、バルプロ酸、三環系抗うつ薬など〕が無効だったエピソード性片頭痛患者621例(平均年齢41.3±11.2歳、女性87.8%)。主な適格基準は、①18歳以上、②直近12カ月以上の片頭痛歴がある、③直近3カ月の平均MMDが4日以上15日未満、④過去6カ月間に有効性の欠如または忍容性の低下により1~2回の予防治療失敗歴がある―とした。

 対象を、エレヌマブ70mgまたは140mgに切り替える群(エレヌマブ群、413例)と主治医判断による用量でOMPMを継続する群(OMPM群、208例)に2:1でランダムに割り付け、非盲検下で52週間治療した。両群とも単剤療法のみとし、薬剤切り替えは主治医および患者の判断に委ねた。

 主要評価項目は、12カ月時点における平均MMDがベースラインから50%以上減少した患者の割合とした。副次評価項目は、治療期間中のMMDのベースラインからの累積平均変化量と、12カ月時点の全般的印象評価(Patient Global Impression of Change;PGIC)スケールで評価した治療反応率とした。

エレヌマブへの切り替え例でORが6.43

 621例中523例(84.2%)が試験を完遂した。

 解析の結果、12カ月時点で主要評価項目を達成した患者の割合は、OMPM群の16.8%に対しエレヌマブ群では56.2%と有意に多かった〔オッズ比(OR)6.48、95%CI 4.28〜9.82、P<0.001〕。

 12カ月時のPGICスケールで高い治療反応(5点以上)を示した患者の割合は、OMPM群の18.8%に対し、エレヌマブ群では76.0%と有意に多かった(OR 13.75、95%CI 9.08〜20.83、P<0.001)。

 MMDの累積平均変化量についても、OMPM群の-2.65日に対し、エレヌマブ群では-4.32日と有意な減少が示された(治療差±標準偏差-1.67±0.35日、P<0.001)。

 OMPM群に比べエレヌマブ群では、薬剤の切り替え例が大幅に少なく〔208例中72例(34.6%) vs. 413例中9例(2.2%)〕、有害事象による治療中止例も少なかった〔206例中48例(23.3%) vs. 408例中12例(2.9%)〕。また、エレヌマブの新たな安全性シグナルは確認されなかった。

 今回の結果を踏まえ、Pozo-Rosich氏らは「無効例において非特異的OMPMによる治療を長引かせるべきでないことが示された」と結論。「欧州頭痛連盟が最近発表したガイドラインの『予防治療が必要な片頭痛患者に対する第一選択薬として、抗CGRP抗体を考慮する』という内容を支持するものである」と付言している。

(今手麻衣)