国立がん研究センターなどの研究グループは16日までに、女性の肺がん患者で受動喫煙の経験がある非喫煙者は、そうでない非喫煙者に比べ、より多くの遺伝子変異が蓄積していることが分かったと発表した。受動喫煙で肺の中に炎症が起きることで、特定の酵素が活性化。能動喫煙とは異なるタイプの変異が誘発され、初期の腫瘍細胞を悪性化させるという。
 研究グループは、同センター中央病院で2011~17年に肺腺がん手術を受けた女性のうち、非喫煙者291人と能動喫煙者122人のゲノムを解析。10代と30代での受動喫煙歴のアンケート調査を踏まえ、変異の特徴などを調べた。
 その結果、受動喫煙と能動喫煙では遺伝子変異のタイプが異なることが判明した。受動喫煙の経験がある非喫煙者の肺腺がんでは、変異を促す酵素「APOBEC」が活性化していた。この酵素が変異を誘発し、腫瘍細胞の悪性度を高めていると推察され、APOBECによる変異では抗がん剤も早い段階で効かなくなるという。
 一方、能動喫煙者で見られる変異は、たばこに含まれる発がん物質がDNAに結合して引き起こされる。受動喫煙者からは、このタイプの変異はごくまれにしか確認されなかった。
 同センターによると、肺がんはがん死因の1位で、国内では年間約7万6000人が死亡している。同センターは「日本では改正健康増進法の下でも、経過措置の形で屋内全面禁煙が十分に普及していない。健康被害を防ぐため、屋内全面禁煙の法制化が望まれる」としている。 (C)時事通信社