治療・予防

病気のサイン見逃さず受診を
認知症と高齢者うつ

 65歳以上の高齢者のおよそ7人に1人に認められ、今後も患者数の増加が見込まれる認知症。高齢者のうつ病も認知症と似たような症状を示すこともあるため間違われやすい。精神科医であるメモリークリニックお茶の水(東京都文京区)の朝田隆院長(理事長)に、これら二つの疾患の特徴やその関係について聞いた。

 ▽家族の死などでうつに

 認知症の場合、日時や自分のいる場所が分からなくなるといった特徴的な症状が表れるが、うつも症状の一つだ。アルツハイマー型認知症では「2割程度がうつ症状を伴います」と朝田院長。別のタイプの認知症であるレビー小体型認知症では、5割を超えるという。

認知症と高齢者うつの主な症状

認知症と高齢者うつの主な症状

 一方、高齢者は、退職、家族や友人との死別といった環境の変化、加齢に伴う身体疾患の罹患(りかん)などをきっかけに、うつ病になることがある。高齢者のうつ病は、自分はがんのような深刻な病気ではないかと気をもむ傾向や、表情が乏しく動作が緩慢になるといった特徴がある。判断力や注意力の低下など、認知症とよく似た症状を示すこともある。

 認知症と高齢者のうつ病は見分けがつきにくいが、家族や周囲の人はそれら病気のサインを見逃さないことが大切だ。病気の兆候が表れたら、専門医への受診を促し、正しい診断、適切な治療に導くことが重要となる。

 ▽専門医を診察して見極めを

 精神科や神経内科を受診すると、認知機能の検査や、患者が以前にうつ病にかかったことがあるか、家族に認知症の人がいるかなどの問診がある。必要に応じて脳の萎縮・血流を調べる画像検査なども行い、認知症かうつ病か、あるいは他の病気かが判別される。

 朝田院長は「症状を適切に見極め、認知症なら認知症の治療を、うつ病ならうつ病の治療をすれば、症状は良くなるでしょう」と解説する。ただし、状況によっては、認知症という直接的な説明を控えることもあるという。

 精神科や神経内科などの医師らで構成される日本老年精神医学会では「高齢者の心の病と認知症に関する専門医」を認定しており、同学会のウェブサイト(http://www.rounen.org/)で地域別に検索できる。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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