Dr.純子のメディカルサロン

地震で避難、でも、けがをしていたら
~自分や周りの人でできること~ 横田裕行・日本医科大学付属病院高度救命救急センター長

 海原 包帯が近くにない場合、代用できるものはありますか。

 横田 適切な幅に切ったシーツやタオルなどは包帯の代用になると思います。ネクタイも包帯の代用として使用できると思います。

東日本大震災から約1カ月がたち、公立志津川病院の仮設診療所で、眼科の医師(右)から診察を受ける男性患者=2011年4月15日、宮城・南三陸町

東日本大震災から約1カ月がたち、公立志津川病院の仮設診療所で、眼科の医師(右)から診察を受ける男性患者=2011年4月15日、宮城・南三陸町


 海原 目にガラスの破片など異物が入ったような場合、どんな処置をしてから避難するといいでしょうか。
 
 横田 むやみにこすったりすると、角膜や眼球自体の損傷につながりますので、行ってはなりません。ガーゼや清潔な布を当てて、速やかに医療機関を受診する必要があります。

 ◇意識ない人を見たら連係プレー

 海原 意識を失って、呼吸停止を起こしている人に対してできる処置を教えてください。

 横田 意識を失っている人を見つけたら、まずは大声で誰かを呼びましょう。

 協力者が来たら、「あなたは救急車を呼んで」と、119番通報を依頼します。近くにAED(自動体外式除細動器)があれば、取って来てもらいます。

 次に、胸や腹部の動きを観察して普段通りの呼吸をしているかを確認します。

 普段通りの呼吸をしていなければ、胸骨圧迫(いわゆる心マッサージ)を行います。胸骨圧迫の部位は胸の真ん中で左右の乳頭を結んだ線のレベルです。

 胸骨圧迫の強さは、胸が少なくとも5センチ沈み込む程度で、速さは1分間に少なくとも100回のリズムで圧迫を行います。

タオルを包帯代わりに使ってみるワークショップの参加者ら=神戸市の「人と防災未来センター」

タオルを包帯代わりに使ってみるワークショップの参加者ら=神戸市の「人と防災未来センター」

 人工呼吸ができる場合は、片手を傷病者の額に当て、もう一方の手の人差し指と中指の2本を顎先(おとがい部)に当て、あご先を持ち上げます。

 額に当てた手の親指と人差し指で傷病者の鼻をつまんで、口を大きく開け傷病者の口を覆い、空気が漏れないようにして息を(1回に約1秒かけて)2回吹き込みます。

 息を吹き込んだら、口を離して傷病者の吐く息を観察します。30回の胸骨圧迫(心臓マッサージ)と2回の人工呼吸のサイクル(30:2)を繰り返します。

 なお、AEDが到着した場合は、電極パッドを傷病者の胸に張り付け、AEDの音声メッセージに従います。

 ◇避難袋にお薬手帳

 海原 先生がこれまでの被災地支援で「これは家に準備しておいた方がいい」と思われた、応急処置に必要なもの、「避難袋に入れておいた方がいい」というものを教えてください。

 横田 応急手当に必要な医薬品や包帯、ばんそうこうに加えて、正確な情報をいち早く取るための携帯ラジオ、携帯電話やスマートフォンは必要です。

 充電器、乾電池などは避難袋に入れておいた方がいいと思います。また、普段服用しているお薬があれば、避難の際にお薬手帳を携帯することも忘れないでください。

(文 海原純子)

 横田 裕行(よこた・ひろゆき)

 日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野教授、同大学付属病院高度救命救急センター長。

 1980年日本医科大学卒。米テキサス州ベイラー医科大学脳神経外科留学を経て、2007年日本医科大学救急医学教室教授。08年から日本医科大学大学院教授、 同大学付属病院高度救命救急センター長。

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