増える子どもの脂肪肝リスク―NAFLD
小児期の治療で肝硬変回避
子どもの脂肪肝が増えている。背景には、メタボ予備軍として社会的な関心を集める小児肥満の増加がある。「早期に発見して治療を始め、肝硬変への進行を止める対処が急がれます」と、大阪市立大学医学部付属病院小児科・新生児科の徳原大介講師は話す。
子どもは肥満からNAFLDに。体重を増やさないことが大事
▽肥満が原因
肝臓に脂肪が多くたまってしまう脂肪肝には、飲酒によるアルコール性の脂肪肝と、お酒をあまり飲まないのに起こる非アルコール性の脂肪肝(NAFLD=ナッフルディー)とがある。NAFLDにはこれまで、脂肪肝のまま進行しないNAFL(ナッフル)と、肝臓が徐々に線維化して肝硬変に進行するNASH(ナッシュ)があると考えられてきたが、最近では肝生検でNAFLと診断された人でもNASHに移行する可能性があることが分かってきた。
小児のNAFLDについて徳原講師は、生まれつき肝臓に疾患があるのではなく、肥満が原因だと指摘する。肥満の小児は、1980年代から2013年に47.1%増加したとの調査報告がある。また徳原講師によると、小児全体における脂肪肝の発症率は2.6~9.6%だが、肥満小児に限ると22.5~44%に上昇するという。
「小児では、肥満に至る過程が成人と異なります。不登校など何らかの事情があり、引きこもることによる運動不足や過食が隠れているケースがかなり多いのです」
徳原講師らは、脂肪肝のリスクの高い肥満小児の中からNASHを見つけ出すことが重要と考え、同病院を受診した1~18歳の214人を対象に、フィブロスキャンという装置を使って、肝脂肪蓄積量と肝硬度を測定した。すると、肥満の小児では肝脂肪蓄積量、肝硬度とも明らかに高いことが分かったという。「一部の患児では肝生検との比較も行い、検査結果に相違がないことを確認しました」と徳原講師。月1回の受診時に測定した肝脂肪蓄積量と肝硬度の値を示すことで、本人も保護者も治療に積極的になれたという。
治療には保護者の協力が欠かせない。食事療法は栄養士の指導を受けながら、ご飯の量だけを減らすなど、保護者も継続しやすいメニューで進める。運動には会話を楽しみながらの散歩を取り入れる。体重は減らすよりも増やさないことを優先し、増やさない目標が達成できたら、「次は1キログラム減らしたい」など、目標を本人の口から言わせることが大切だ。不登校である場合は、児童心理司とともに治療に臨む。「成人以降に肝硬変に移行しないためには、小児期の治療が重要です」と徳原講師は強調している。(ディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/09/22 08:00)