研修医こーたの出来たてクリニック

ダイエットの王道と誤った知識
痩せ薬で重篤な副作用も

 私は全米エクササイズ協会認定のパーソナルトレーナー資格を持つ研修医です。病院の一般診療で研さんを積みながら、空いた時間で肥満症患者さんの運動指導をさせていただいています。具体的には、肥満症=用語解説1=の改善を目指して長期教育入院している患者さんと毎日一緒にリハビリ室で運動し、短期入院の患者さんには家でできるトレーニングを提案しています。

 ◇3日で3キロ痩せた!

 患者さんには誤ったダイエットの知識を持っていらっしゃる方も多く、その知識がダイエットの障壁となっていることもしばしばあります。ありがちな間違いを三つ提示させていただき、皆さまのダイエットのお役に立てればと思います。

ちょっと待った!炭水化物を抜くのは危険です

ちょっと待った!炭水化物を抜くのは危険です

「3日で3キロダイエットできた」とおっしゃる方がいます。しかしこれは、本当の意味でのダイエットとは言えなさそうです。確かに体重としては減少したかもしれませんが、短期間での体重減少は体水分や便が出たことによるもので、脂肪が減少したわけではないです。脂肪は1キロ減らすために7000~8000kcalのカロリー消費を必要とします。残念ながら数日で簡単に痩せることはありえません。

 ◇炭水化物ダイエットが王道?

 おかずの量はそのままでご飯やパンなどの炭水化物を減らすダイエット、いわゆる低炭水化物ダイエットが主流になっていますが、実は健康的とは言えません。最新の研究では、「総摂取カロリーの50~55%を炭水化物から摂取すると最も死亡率が低くなる。50%未満55%以上ではU字状に死亡率が上昇する」というデータが出ています(注)。

 確かに食事全体をまんべんなく減らすよりも、炭水化物のみを減らす方が楽ですし、体重の減少も見込めます。しかし、死亡リスクを考えると、正しいダイエット方法とは言えないという面も頭に入れて置いていただけると幸いです。

 ◇美容外科で痩せ薬?

 「糖尿病治療注射薬を痩せ薬として処方している美容外科クリニックがあると聞いたのですが、安全性に問題はないのですか」といった質問を受けます。結論から申し上げますと、問題ないとは言えません。

 製薬会社の人に問い合わせても、「長期的なデータがなく重大な副作用がないとは言えない。健康な人への乱用は控えていただきたい」という回答が返ってきました。

 不適正利用に当たりますので、仮に重篤な副作用が出てしまったとしても、副作用救済給付=用語解説2=の対象になりません。糖尿病と診断されていない方には、全く持ってお勧めできないダイエット方法であると断言させていただきます。

 耳が痛いことばかりを書いてしまいましたが、ダイエット方法の王道は正しい食生活、適切な運動、規則正しい睡眠です。なかなか難しいですが、「当たり前のことを当たり前に行うダイエット」が究極のダイエットだと私は考えています。(研修医・渡邉昂汰)

【用語解説】
(1)肥満症=BMI25以上かつ肥満による合併症や健康問題が生じている状態
(2)副作用救済給付=医薬品を適正利用したにもかかわらず、医薬品の副作用によって患者が入院、死亡した際に支払われる給付金

(注)参考文献 Seidelmann SB et al. Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis. Lancet Public Health. 2018 Sep;3(9):e419-e428. doi: 10.1016/S2468-2667(18)30135-X. Epub 2018 Aug 17.


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