研修医こーたの出来たてクリニック

後期研修医のコロナ病院派遣に疑問
全医療者に門戸開放を(研修医・渡邉昂汰)

 2021年1月12日、お昼の番組「ひるおび」の中で、南和友氏が「全国で27,000人程度いる後期研修医(専攻医)を、地域研修の一環としてコロナ専門病院へ派遣する」という提案を国にしていると、コメントしました。

 南氏はこの番組の中で概略以下のように発言しています。「後期研修の中にですね、最低2カ月間は地域医療をやるべきだというカリキュラムが入っております。そうしますと、例えば群馬から後期研修医が来れば、地域研修をしたということで認められますので、彼らにとって何らデメリットはない。それどころか、コロナのような緊急患者を診るということは非常に医者にとってもプラスである。後期研修医は給料をもらっていますから、そこに少し実費でホテル代とか交通費を出すくらいで済むことなのでこれは早急にやっていただきたいです」。この提言について、来年から後期研修医になる私は大きな疑問を抱いています。

ボクが後期研修医のコロナ病院派遣案に疑問を持つ訳

 ◇地域研修を名目にするべきではない

 主に3〜7年目の医師で構成される後期研修医には、なぜ地域医療従事が義務付けられているのでしょうか。これは単に足りないところに人員を送りたいからという理由だけではないのです。地域医療には明確な定義がなく一概には言えませんが、1980年の地域医療研究会にて「包括医療(広く保健予防、健康増進、疾病の早期発見、診療、後療法、更生医療)を地域に社会的に適応し実践すること」と定義されています。

 つまり、大病院などで行われている先進的な医療にとどまらず、地域行政や住民組織と協力して医療活動を行おうということです。そうした経験をもとに、広い視野を持って患者さん一人一人の背景に沿った医療を提供できるようになることこそ、地域研修の最大の目的なのではないでしょうか。

 よって、地域研修はただ単にコロナ専門病院での診療に置き換えられるものではありません。地域医療の名を使って後期研修医を招集することは、明らかに地域研修の軽視であり、大きな間違いだと言えるでしょう。

 ◇ではコロナ病院の人員はどのようにリクルートすべきか

 南氏の発言には賛同できるところも一部ありました。コロナ患者への集中治療に現場の医師として携わることは、間違いなく今後の医師人生において大きなプラスとなると思います。救急治療、集中治療、感染症など各分野のスペシャリストが指導者として常駐しているのであれば、経験を積むためにと、自ら手を挙げる人も出てくるでしょう。ぜひ後期研修医だけでなく、全医療従事者に対して門戸を開いていただきたいと思います。いろいろなものを出し渋らず、学べる場や危険手当などの、リスクに見合った対価が得られる仕組み作りを進めれば、人員は集まるのではないでしょうか。強制招集で一部の人に負担を押し付けるのではなく、Win-Winの関係に近づくような仕組みをお考えいただきたいと思います。(了)

※用語説明
後期研修医(専攻医)…2年間の初期研修を終えた後、専門医プログラムで経験を積んでいる医師のこと。南氏が使用した後期研修医という呼び名は現在あまり使われておらず、専攻医という呼び名が使われている。

渡邉昂汰氏


 ◇渡邉 昂汰(わたなべ・こーた)氏
 初期研修医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。将来は地域医療に従事する予定。

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