医学生のフィールド

【医学生インタビュー】
新専門医制度ってどうなってるの?
日本専門医機構の寺本民生理事長に聞く・前編

 ◇基本領域と細分化領域の認定を一元化

 ―新専門医制度は今までの専門医制度とどのように違うのでしょうか。ハードルが高くなるのでしょうか。

 寺本先生 日本の医師制度は世界の中でも珍しく、国家試験で医師資格を取得すると一生医師でいられます。新しい制度で専門医を取得するのが難しくなるのかとよく聞かれるのですが、そういうことではなく、誰から見てもこの人なら専門医と言ってもいいレベルだということを〝第三者が認める〟というのが今回の制度の考え方で、国民にとって分かりやすく整理することが目的です。

 内科、外科、小児科、産婦人科のような主要な診療科が「基本領域」、循環器、消化器のようなさらに細分化したものが「サブスペシャルティ」ですが、専門医機構は今まで学会が行っていた、基本領域とサブスペシャルティの研修先の登録・受付、育成された医師の認定を一元化し、一般の人たちに周知していきます。

 専門医の先生方は、専門医資格を取得することで、患者さんたちに対してその知識や技術を供与していく義務が生じることになります。

 ―専門医認定されなくてもキャリアや実績があれば必要ないという先生もいると思うのですが。専門医の認定を受けないとどうなるのでしょうか。

 寺本先生 私は70歳を過ぎてますから、内科の臨床のキャリアを長く積んだことで、例えば専門外の皮膚科の患者さんを診療したとしても、ある程度の判断はできます。若手の皮膚科医よりもよく知っている自信はあり、処置の仕方も分かっている場合がありますが、技量を担保されているわけではありません。第三者から認められて初めて患者さんにも責任が持てる診療を行えるのです。

 今までは学会が決めた専門医は、専門医として広告可能となっていました。例えば循環器学会で認定されたら「循環器専門医」と標榜(ひょうぼう)できます。これが将来的には、専門医機構が認定した循環器専門医に徐々に統一されていきます。

 特に民間療法のような独自の治療はエビデンスが示されていないことも多く、患者さんにとっても不安が募り、リスクを伴うことがあります。患者さんが医師を選ぶ際に、専門医機構で認定された専門医を選ぶことで一定の基準の専門医の診療が担保されるのです。

 もちろん専門医資格がなくても医師資格があるので診療は行えます。ですが、患者さんからの信頼を得るという意味で言えば、専門医資格を持っているという効力は大きいと思います。

 ◇将来は専門医機構の認定医だけに

 ―今までに認定された専門医はどうなるのですか。

 寺本先生 各学会が行っている専門医認定はもともとしっかりしていますから、新制度の専門医が優れているということではありません。ただ、団体や組織によっては専門医の考え方が違いますから、レベルに差が出てきます。そういった専門医を見直す作用もあるわけです。

 専門医機構が認定する新しい制度は昨年(2018年)始まったばかりなので、現在、学会が認定する既存の専門医と、機構が認定する新しい専門医が両方混在することになります。

 今後、従来の学会認定の専門医から専門医機構の認めた専門医に移行してそれが中心になってくるので、将来的には当機構が認定した専門医だけが標榜できるようになります。


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