治療・予防

40歳未満で閉経―早発卵巣不全 
骨粗しょう症や心臓病のリスクに

 女性は50歳前後になると、卵巣機能が低下、女性ホルモンが急激に減少して閉経する。ただ、中には40歳未満で無月経になる人がおり、その状態を「早発卵巣不全(早期閉経)」という。妊娠が極めて難しくなるだけでなく、将来的に骨粗しょう症や心臓病などを発症しやすくなる。東京歯科大学市川総合病院(千葉県市川市)産婦人科の小川真里子医長に話を聞いた。

 ▽100人に1人が発症

 女性ホルモンであるエストロゲンは、脳の視床下部から下垂体を経て、卵巣へとホルモンの刺激が伝わることで分泌され、排卵や月経を起こす。思春期から分泌量が増え、閉経前後の更年期になると急激に減少する。

 「早発卵巣不全は、40歳未満で6カ月から1年間、月経のない状態が続くことを言います。下垂体から卵胞の成長とエストロゲンの分泌を促す卵胞刺激ホルモンが分泌されていても、卵巣機能が低下して卵胞が成長せず、エストロゲンが分泌されません」と小川医長。

 早発卵巣不全は、遺伝的要素や自己免疫疾患が関係している人もいるが、多くは原因不明だ。発症頻度は40歳未満で約1%、30歳未満で約0.1%、無月経の人の5~10%といわれる。

 ▽妊娠率が著しく低下

 エストロゲンには、骨形成を促進し骨吸収を抑制する、血管の柔軟性を維持する、血圧上昇を抑えるなどの作用がある。早発卵巣不全になると、30代から更年期障害だけでなく、骨粗しょう症、脂質異常症や心臓病などが起きやすくなる。妊娠希望の有無にかかわらず、早期に治療を開始することが大切だ。

 「治療としては、平均的な閉経年齢である50歳くらいまで女性ホルモンの補充療法を行います。まれに突発的な排卵の可能性があるため、妊娠を希望しない人には低用量ピルを使うこともあります」と小川医長。

 早発卵巣不全になると妊娠は極めて難しくなり、自然に妊娠する確率は4.4%にとどまる。妊娠を希望する場合は、ホルモンを補充して排卵を促す治療が行われるが、近年、卵巣内に残存する卵胞を体外で人為的に活性化させる「原始卵胞体外活性化療法」という治療法が開発され、新しい不妊治療法として期待されている。

 早発卵巣不全は、発症しても受診に至らない例が多いとみられる。小川医長は「将来の病気のリスクに備えるためにも、45歳以下で閉経した場合は産婦人科医に相談しましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)


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