治療・予防

精液が真っ赤に―血精液症 
一人悩まず、心配なら泌尿器科へ

 射精して真っ赤な精液が出てきたら、多くの男性は衝撃を受けるはず。パニックに陥り、一人思い悩む人も少なくないであろう。東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)泌尿器科の頴川晋診療部長は「決して珍しい状況ではなく、大抵は心配の必要もありません。ただし、40歳以上の場合は重大な病気が隠れている可能性もあり、やはり泌尿器科を受診するといいでしょう」と話す。

40代以上の人や1カ月以上治まらない場合は受診を

40代以上の人や1カ月以上治まらない場合は受診を

 ▽1週間程度で治まる

 射精前の精液の主成分である分泌液は、筋肉でできた精嚢(せいのう)という袋にたまっている。この袋が縮むと、分泌液が射精管に流出し、精子や前立腺液と混じり合い、尿道を経て、外に放出される。スポイトの液体が押し出されるイメージだ。

 精液が赤くなるメカニズムは単純だ。精嚢が射精のために勢いよく縮む過程で、筋肉表面の粘膜が切れ、流れ出た血液が精嚢の分泌液と混ざり、赤い精液となって射精される。「鼻の内側も粘膜で覆われています。鼻を強くかむと、粘膜が切れて鼻血が出ますが、同様のことが精嚢の中で起こっているのです」と頴川医師は説明する。

 鼻血が時間とともに治まるように、血精液症も基本的には放置したままで白い精液に戻る。泌尿器科を受診すれば、超音波検査などで周辺臓器の異常の有無を確認した上で、粘膜の傷の治癒を促す止血剤を処方してくれる。何より医師から「心配ない」というお墨付きをもらえる安心感は大きいだろう。

 粘膜にできた傷自体は1~2日でふさがるが、きれいに治るまでは1週間程度を要する。それまでは極力射精を控えた方がいい。

 前立腺がんの場合も

 基本的には、性生活が活発な思春期以降30歳くらいまでによく見られる。そのため、性病と思い込む人がいるかもしれない。「医学の世界でも精嚢の炎症と考えられていた時代がありましたが、仮に精嚢にばい菌が入ったら、そう簡単には治りません。30年以上医者をしていますが、性病の原因菌が血精液症を引き起こしたケースは一度も経験していません」と頴川医師。一方で、好発年齢を超えた血精液症の場合は、泌尿器科受診を強く勧める。

 高齢者に多いがんの一つに、前立腺がんがある。前立腺がんが大きくなると、頻度は低いものの赤い精液が出ることがあるという。頴川医師は、40代以上の血精液症患者に対しては腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)を測るようにしているという。

 「血精液症の男性が衝撃を受けるのは当然ですが、腎臓、ぼうこう、直腸など前立腺以外の周辺臓器のがんが原因になることはありません。一人で悩まず、症状が1カ月続くようなら泌尿器科を受診してください」と勧めている。(メディカルトリビューン=時事)


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