治療・予防

当事者らの自覚薄く―モラハラ 
理不尽な精神的ダメージ

 配偶者に毎日のように叱責され家でも緊張を強いられる、職場で日々ののしられ出勤が憂鬱(ゆううつ)だ―。言葉や態度による度を超した精神的暴力で相手にダメージを与えるモラルハラスメント(モラハラ)は、被害者・加害者ともに自覚のないケースが多い。まきメンタルクリニック(大阪市)の西崎真紀院長に聞いた。

一緒にいるのがつらいと感じたら行動を

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 ▽共依存の泥沼

 モラハラは、家庭や職場などさまざまな場所で起こり得る。家庭では、家事について細かく指示を出し、守れないと長時間にわたり罵倒・説教する、学歴や収入などをばかにする、生活費を十分に渡さず経済的に支配する、周囲とのつながりを絶って孤立させる―など。

 職場では、集団で嫌がらせをする、人前で叱責する、などがあり、上司から部下へのハラスメントはパワハラと呼ばれる。

 モラハラの加害者には次のような特徴があると、西崎院長は指摘する。〔1〕最初は優しいが、ある日豹変(ひょうへん)する〔2〕気分によって言うことが変わり、相手がそれに対応できないと叱責。発言の変遷を相手に責任転嫁する〔3〕自分を正当化し、哀れな自分をアピールする〔4〕自分より強い相手には下手に出て、弱い相手には強く出る〔5〕口が達者で、被害者を言いくるめて「自分が悪いのだ」と思わせる〔6〕他人への共感性が乏しいのに「相手を受け入れてやる心の広い自分」として振る舞う―など。

 一方、被害者には自分に自信がなく、相手に尽くしたがるという傾向がある。こうして両者は、「加害―被害」の関係であるのに、相互に必要とし合う「共依存」と呼ばれる泥沼にはまるという。

 ▽精神科や相談窓口へ

 「モラハラを受け続けていると、被害者は自分がすべて悪く、駄目な自分を愛してくれるのは加害者だけなどと思うようになります。そして次第に正常な思考ができなくなり、一種の洗脳状態に陥ってしまうのです」と西崎院長。

 しっかり考えることができず、不眠や食欲不振など、うつに似た症状が表れて精神科を受診し、モラハラ被害を受けていると指摘され、ようやく気付くケースが多いという。

 加害者にモラハラの自覚はないので、一緒にいる限りモラハラの被害は続く。職場であれば、精神科の診断書を持って人事部に行き、休職や異動の相談をする。家庭のモラハラで、経済的に支配されている妻の場合は夫と離れるのは難しいが、市町村が開設する無料のDV相談窓口や、基本的に有料だが日本司法支援センター(法テラス)などでも相談できるという。

 「思い当たることがあり、一緒にいるのがつらいと思ったら、ためらわずに精神科や相談窓口で話を聞いてもらいましょう」と西崎院長は勧めている。(メディカルトリビューン=時事)


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