ヘルスコミュニケーションDr.純子のメディカルサロン

新型コロナ感染拡大のストレスを乗り切るために
~AIを使った新しいツールの活用を目指す~ 大野裕・認知行動療法研修開発センター理事長に聞く


 海原 チャットボットという名前は斬新ですが。

 大野 おしゃべりをすると言っても、現在の言語処理技術は、声で会話をするほどには精度が完成されていません。

 そのため、利用者に文章で書き込んでもらって、それにAIを利用したロボットが文章で答える形になっています。

 今でも、音声入力はできますが、それも文章に変換されてから、ロボットに送られることになります。

 AIチャットボット「こころコンディショナー」の会話の流れですが、雑談モードと相談モードに分かれていて、どちらを選ぶか、選択できます。

 雑談モードは、自分の思いや考えを人に聞いてもらいたいときに使う会話の流れです。まだ相づちの打ち方が不自然だったりしますが、気持ちを吐き出して、気分を発散したいときに役に立ちます。

 また、会話の途中で、話の内容が深刻だとAIが判断したときには、相談モードに切り替えるかどうか、聞いてきたりします。


 海原 それはすごいですね。相手が人間だと、「こんなこと、言って大丈夫かな」と忖度(そんたく)したりしますが、AIなら安心な感じがします。

 そこで聞いてもらえて、客観的な意見を言ってもらえるとしたら、もしかすると、人間相手より自由に話せる人もいるような気がします。雑談をするだけでなく相談にも乗ってくれるのですね。

 大野 相談モードは、私が専門にする認知行動療法の考え方に沿って、悩みを整理していくようになっています。その流れは、まず問題となっている出来事について尋ねて、気持ちに共感しながら、深呼吸して、自分を取り戻すように勧めます。

 次に、自分の考えを振り返って、考えが極端になっていないかどうかを確認してもらい、現実に沿って冷静に考えていけるように手助けします。

 その上で、自分が実現できればと期待している現実に近づく手だてを一緒に考えていくようにします。

 このように言うと、AIに人の気持ちを理解して、問題を解決できるのだろうかという疑問が湧くかもしれません。

AIチャットボット「こころコンディショナー」相談ページの実際の画面。質問に答えていく形で進行していく【開発中ウェブサイトより】

 それは、もっともな疑問で、AIは人の気持ちを感じ取ったり、考えの流れを理解して解決策を提案したりするほど、頭が良くはありません。

 しかし、問題に直面して動揺している人が、落ち着きを取り戻して、問題を解決する力を取り戻していく手助けはできます。

 実を言うと、こうした作業は、私たち専門家がやっていることでもあります。

 私たち専門家が、悩みを抱えた患者さんの話を聞くときには、私たちが患者さんの代わりに問題を解決する手だてを考えるのではありません。

 そうではなく、患者さんが自分で考え、解決していけるように、患者さんの力を引き出すのが、専門家の力なのです。

 こうした作業は、AIでもできるだろうと私は考えていて、「こころコンディショナー」の開発を行っています。

 ただ、現在の技術は、医療機関を受診する患者さんを治療するほどには発達していません。

 ですから、現状では、医療機関にかかっていない人が、日常生活で不安や落ち込みを感じたときに、気持ちを整えるツールとして使っていただくことを想定して開発しています。

 医療現場で使っていただくことも可能ですが、その場合は、医師の指導の下に使っていただく必要があります。


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