治療・予防

コロナでもう一つの「医療崩壊」 
悩むクリニックの現場

山本謙吾・東京医科大学教授

山本謙吾・東京医科大学教授

 ◇リハビリ中断の危険

 感染が長期化すれば内科以外の診療科でも、患者が適切な診療を受けられる体制を整えることが大事だ。さらに、患者への継続的なケアは医師だけではできない。

 整形外科などの領域では、麻痺や痛みなどに苦しむ患者に対して、理学療法士や作業療法士による継続的なリハビリが欠かせない。ただ、療法士らは患者と密着したマンツーマンでリハビリを行い、1日に複数の患者に対応する必要があるため、院内感染のリスクは低いとは言えない状況だ。

リハビリが欠かせない患者もいる=東京医科大学病院で

リハビリが欠かせない患者もいる=東京医科大学病院で

 東京医科大学病院副院長でもある山本謙吾教授(整形外科)は、「リハビリ施設に通う際の感染リスクもあり、リハビリが中断している患者は決して少なくない。またリハビリを行う際にはある程度力が要るため、その分療法士の呼吸も激しくなる。リハビリ中の感染防御やリハビリ施設にしてもこれといった『特効薬』はない」と、悩ましい胸中を打ち明ける。

 特に高齢の患者はリハビリを続けないと身体機能の低下は避けられず、運動器障害の悪化や衰弱という形で問題が表面化することは避けられない。

 山本教授は「患者自身が一人でできるリハビリもあるが、ある程度元気な人に限られるし、専用機器を必要とするものも多い。療法士が自宅を訪問する在宅リハビリも、療法士との接触による感染のリスクはある上に効率が悪く、必要とされるスタッフの人数とは開きがある。介護予防の問題もあるので、早急に対策をまとめる必要がある」と訴えている。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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