医学生のフィールド

臨床実習もままならず、医学生に募る不安
進級は、卒業は…「柔軟な対策取って」と医学連

 ◇学生の学習環境整備の費用も支援を

 ―医学生の経済状況についてはどうでしょうか。

 アルバイト収入を生活費に充てている学生が、新型コロナの影響で飲食店や塾のアルバイトをできなくなり、親の仕送りも途絶えて生活に困窮し、学業が続けられないという話も聞きます。10万円の特別定額給付金や学生のためのさまざまな支援がありますが、対象が限定的なので、例えば、実習が夏休みにずれ込んで夏休みにバイトができなくなるというケースは対象から外れます。困窮学生に対しては個別の事情をくみ取った上での継続的な支援が求められます。

 高橋亜実さん
 ―学業を続けるために、より手厚い経済的な支援が必要だということですね。

 はい。インターネット環境が脆弱(ぜいじゃく)で、自宅での授業の音声や映像が途切れるという話も聞きます。大学によってはPCやルーターの貸し出しや器具購入のための給付を行っているようですが、学習環境の整備という意味で、これらの費用はすべて大学側の負担でお願いしたいです。

 病院実習も再開されるようですが、現在も大学病院での防護服やマスクは不足しており、個人で用意するよう求められている大学もあります。できれば学生の感染対策にかかる用具は大学側に提供してもらえると助かります。

 医学生は親が裕福だと思われがちですが、一般家庭の学生もたくさんいます。とりわけ私立の大学だと授業料が高いので、新型コロナの影響で親の収入が減ったことにより授業料が払えなくなる人もいます。

 困窮学生に対して手厚い措置が取られている大学もありますが、対応が遅れている大学もあります。新型コロナによって医師を志す学生の学びの機会が奪われないように、国の指導の下、すべての学生に対して手を差し伸べてもらいたいです。

 ◇研修病院の情報が不足

 ―予定されていた研修病院の見学もすべて中止になっているようですが、何か支障はありますか。

 卒業後の研修病院を決めるに当たって、4年生から6年生の間で行う病院見学がとても重要なのですが、新型コロナの感染防止で見学を中止している病院が多く、情報が大変不足しています。オンラインで情報発信を始めた病院もありますが、ホームページでは条件やカリキュラムなどの事務的なことのみで、病院の特色や雰囲気、どのような人材を求めているかといった情報については収集し難い状況です。

 これでは自分が本当に行きたいと思っている研修先を見つけることができず、焦りや不安を覚えている学生も多いと思います。OBのアドバイスなど、学生にとって有益な情報を効率的に得られるような代替手段が求められます。

 また今後、病院見学が再開されたときに、実習や試験などと重ならないよう大学側は考慮してもらいたいです。病院見学に行けなかった場合でも合否には影響しないのであれば、そのことを各病院から確実に発信してほしいです。

 ◇大学ごとでなく、国として明確な方針を

 有馬大樹さん
 ―医学生としての立場から、要望があれば教えてください。

 経済的な支援や緊急事態宣言解除後の学内や院内の感染対策について、大学ごとではなく、国として明確な方針を打ち出して、各病院や大学に対策を促し、指導してもらいたいです。

 コロナパンデミックは前代未聞の事態であり、今後も医療システムや医学教育にも大きな影響をもたらすと思われます。将来、医療の担い手となる私たち学生にとっても、感染症対策や感染症がもたらす社会構造を学ぶ上で貴重な機会だと思っています。

 国家試験、研修病院のマッチング、病院実習の再開、試験やカリキュラムがどうなるか、不安や焦りを覚えるのは、情報がなく先が見えないからであり、検討段階でもいいので、状況についてできる限り情報を共有し、柔軟な対応を取ってほしいです。教育現場では当事者にしか分からないこともあります。大学や医療機関が学生と連携し、学生たちの声を反映することで、未来に求められる医療や新しい医学教育の改革につながるのではないかと思います。


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