血管腫〔けっかんしゅ〕 家庭の医学

 血管腫は、血管の異常により腫瘍として認識されるものです。いままで血管腫で総称されていたものは現在、血管内皮細胞が増殖した血管腫と、血管の形成異常による血管奇形とに分けることができます。血管奇形は、さらに毛細血管奇形、静脈奇形、動静脈奇形、リンパ管奇形などに分類されます。
 血管腫は生後間もなくして出現し、急速増大しますが、血管奇形は出生前から存在します。口周りの血管奇形として頻度の高いものに静脈湖(Venous Lake)がありますが、こちらは外傷や加齢などを契機として発生します。

[治療]
 血管腫では自然消退も見込まれるため、経過観察となることがあります。加療として最近ではプロプラノロールなどの内服療法も効果を示すことが明らかになってきましたが、外科的切除も場合によって選択されます。
 血管奇形では、小さいものは切除術がおこなわれますが、大きいものでは硬化療法(病変内に直接細い針を刺入して、硬化剤を注入し、異常血管の内皮細胞を傷害することにより病変を縮小あるいは消失させる)や塞栓(そくせん)療法に引き続いての切除術がおこなわれます。静脈奇形においては、色素レーザー治療も有効な治療法です。

(執筆・監修:東京大学 名誉教授/JR東京総合病院 名誉院長 髙戸 毅)
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