2025/07/23 05:00
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海原 それで米国のフロリダへ行かれたのですね。訓練は大変だったそうですが、フロリダの水中洞窟はどんな感じでしたか。
上=米フロリダの水中洞窟の入り口にある看板。下=看板には「あなたが死なないために、ここから先に行ってはいけない」などと書かれている(鷹野さん提供)【時事通信社】
鷹野 訓練は大変でしたが、とにかく景色が美しいんです。美しい森や公園の中を進むと、とても透き通った川や湖が現れる。その美しい水を見ていると、ダイバーなら誰でも潜ってみたくなると思います。
でも、ケーブダイビングでは、過去に多くの命が奪われていたんです。フロリダだけでも、水中洞窟で300人以上のダイバーが命を落としたそうです。
命を落とす主な原因は、洞窟の迷路に入り込み、迷い、出口にたどり着けずに、呼吸ガスが無くなる。また、岩などに器材が当たり、呼吸器材が壊れたりするケースなどです。ケーブの中では、罠のようなさまざまな危険が待っているのです。
日本なら、すぐに穴の入り口をふさいでしまうと思いますが、米国では、訓練を受け、ケーブダイバーとしての基準を満たした者には、水中洞窟に潜水するためのライセンス証が発行されているんです。
海原 どんなときに危険を感じますか。
鷹野 計画通りにいかないときや、器材が故障したときなど、焦ります。そんなときは「焦るな!」と自分で自分を怒鳴りつけ、落ち着かせ、どうしたら一番良いのかを自分に考えさせます。
海原 捜索活動でよかったと感じたことはありますか。11年には警視庁の依頼で奥多摩の地底水中洞窟の捜索をしたのですね。10年以上前に洞窟に潜って、行方不明になった上智大学の学生を捜索して、ご遺体を発見し、ご両親に感謝されたと伺いました。
2011年の奥多摩での捜索活動現場(鷹野さん提供)【時事通信社】
鷹野 洞窟探検のサークル活動をしていて遭難した学生さんの捜索でした。何かの役にたったと、そう思えた時かもしれません。捜索を終えて戻ってきた時、警察の人たちが整列して迎えてくれた時は感激しました。
◆洞窟に感謝
海原 ロシアのオルダ水中洞窟調査にも協力していますね。すごい寒さだったとか。
鷹野 あの時は、私は潜水撮影班の事前訓練を依頼され、現地では潜水班の安全管理やサポートを担当させてもらいました。冬のオルダ洞窟は、気温マイナス30度以下の地でした。
水中洞窟の水はとても冷たく、石こう質のもろい水中洞窟だったので、崩落の危険も心配でした。実際、潜水中にボーリング玉くらいの岩が崩落し、私の頭を直撃したこともありました。幸い、水中だったので、助かりましたが。
私は、オルダ洞窟に対しては他にも、いろいろと危険を感じていたので、たぶん、誰よりも、毎日とても緊張して潜っていたと思います。
海原 調査期間はどれくらいでしたか。
鷹野 冬の調査と撮影は約2カ月間、続きました。最後の潜水で、みんながとても狭い、最後の通路を抜け、洞窟から出て行くのを確認した後、洞窟の中に1人残った私は、最後に洞窟を振り帰り、無事に調査を終えたオルダ洞窟に感謝をしました。
その後、浮上した瞬間、嬉し過ぎて、声を上げましたが、その時、前歯が1本、なくなっているのに気付きました。
気温マイナス36度近辺を示す寒暖計(鷹野さん提供)【時事通信社】
海原 お仕事では人を助けることもあり、調査もあり、教育もあるのですよね。
鷹野 捜索、調査、撮影など、仕事に呼ばれた環境や内容で、感じることもさまざまです。
私は、自分を優れたダイバーだとは思っていません。弱気になるときもあれば、失敗もします。
これからも自分のできる範囲で、気持ちの合う人たちと一緒に仕事ができ、その仕事が少しでも誰かに喜ばれるのなら、嬉しいです。
取材後記:「常に命を危険にさらす中での仕事を、なぜ続けているのか」と思いつつ、お話を伺いました。最初は美しさに引かれてケーブダイビングに関わりながら、命のリスクを何度も経験し、それでも自らが持つ技術で救える命のために活動をしているように思えました。2010年には、十和田湖の水深60メートルで65年前に墜落した旧陸軍機の遺体捜索、11年には陸前高田での震災後の捜索活動などを行っています。未解決の問題に向き合い、一つ一つ解決に向けて精力的に進む仕事ぶりは、ダイビングに対するこれまでのイメージをすっかり変えるものでした。
鷹野 与志弥(たかの・よしや) 世界水中連盟(CMAS)ストラクター・トレーナー、 潜水指導団体TDIインストラクター・トレーナー、 日本海中技術振興会潜水訓練主任などを務める。 一級小型船舶操縦士、ヘリコプター操縦士(陸上と水上)などの資格を持つ。
(2020/10/08 06:00)
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