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働く女性のストレス、義両親の本音がコロナ禍で表面化 第56回

 結婚後も仕事を続けている30代のAさんは、夫と小学1年のお子さんの3人暮らしです。

 経理業務担当で、責任のある立場になり、仕事面では充実していて、夫も家事などに協力的です。

コロナ禍でも通勤する人たち(2020年10月撮影)【時事通信社】

 ただ、新型コロナの影響で、仕事の仕方が夫婦とも、変化しました。夫はリモート業務が多くなる一方、Aさんは経理業務なので、どうしても必要ということで、出社の機会が多いのです。

 夫婦2人の間では、家事や買い物などを手分けして行ってきましたが、問題はAさんの夫の両親です。


 ◆働くことへの否定的な雰囲気

 夫の両親は、Aさんが働いていることに関して、もともと、あまりいい気分ではありません。

 どちらかというと、家にいて、きちんと家事や子育てに専念してほしい、という意見なのです。

 そして、新型コロナの感染拡大以降、Aさんの出社自体に感染の危険があること。夫に家のことを任せ、夫が家で働いているのに留守にし、夫に負担をかけていること。こうしたことは、妻としていかがなものか、という雰囲気があるのです。

 始終、様子を聞いてくる夫の母からの電話やLINE(ライン)が怖くて、Aさんは落ち着かなくなりました。

 生活リズムや環境の変化に加え、夫の両親への対応で疲労感が強く、不眠が続いています。夫は「気にしなくていいから」と言うのですが、Aさんは自分が役割を果たしていないような気分になり、最近は、仕事を辞めた方がいいかと思っていると言います。

 ◆建前と本音

 日本社会で「女性の活躍」の必要性が声高に叫ばれるようになってから、もうかなりの年月が経過しています。一方で、国際的なシンクタンク「世界経済フォーラム」が2019年末に発表したジェンダーギャップ指数(政治や経済など4分野の男女格差を表した指数)では、日本は153カ国中、121位で過去最低となりました。

 働く女性は増えていますが、管理職の女性は非常に少ないのが現状です。

 「男性は外で仕事、女性は家で家事・育児」という意識は、表向き、もう過去のものとされていますが、実際には、子どもがいる女性の就労は敬遠されがちです。

 雇う側にとっては、「子どもが熱を出した」「子ども関係の行事がある」という理由で、仕事を休まれるのは困るということが背景にあります。

 総論では女性活躍賛成でも、各論では「家事・育児は女性の役割」という役割分担の考え方が根強く残っています。

 ◆働く女性の「心の呪縛」

 「家事・育児は女性だけの役目」という考えは、過去のものとみなされていますが、実際には、家事・育児を、一部でも人に任せることに、罪悪感を持ってしまう女性も、少なくありません。

 このため、「仕事も家のことも全て完璧にやらなくては」との思いから、過剰適応状態になり、体調を崩す女性は、いまだに多いのです。

 男女雇用機会均等法の施行以来、「スーパーウーマン症候群」という言葉が取りざたされるようになりましたが、それはワークライフバランス(仕事と生活の調和)の調整がうまくいかない結果と言えます。

 専門職である女性医師も、男性医師に比べ、家事・育児で負担感を感じているという調査結果が出ています。調査は、私たちが2015年から3年間、行いました。

 男女100人の医師に働き方や生活満足度について、アンケートを行ったところ、女性医師は「仕事で疲れてしまって家事・育児ができない」「家事・育児に時間を取られて仕事が妨げられる」というファミリーライフコンフリクトの割合が、男性医師に比べて明確に高いことが分かりました。

 ◆育った家庭で意識差

 私たちは、意識の差についても、調査を試みました。「『男は外、女は家』という考えについてどう思いますか」という質問です。自分が育った家庭環境と家庭の意識について質問したのです。

 すると、女性医師が育った家庭で、女性が仕事を持つことに反対する家庭は24%。これに対し、男性医師の育った家庭では、反対が66%でした。

 男性医師の両親には「『女性の仕事』に、どちらかと言えば反対」という意識がある傾向が強いのです。「息子に家事をさせるなど、とんでもない」と考える母親世代がいるのも事実です。

 女性が継続して働ける環境をつくるには、世代間の意識の溝を埋めていく支援も必要です。

 Aさんのように、自分たちの中では、うまく仕事と家庭生活のバランスを取ろうとしているのに、親世代に納得してもらうことに疲労感を覚えることも多いのです。

 若い世代が自分たちなりの価値観を確立して、仕事と家庭のバランスを取ることを受け入れてサポートする仕組みが必要と言えます。

 Aさんも、自分たちなりの家族の在り方を夫と話し合い、自分の生き方に自信を持てるようにすることで、体調を回復する方向に進んでいます。

(文 海原純子)

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